晩年期 「ギブソンJ‐160Eを買う」 の巻
私たちビートルズファンの間でジョン・レノンのギターと言えば、
リッケンの325、
エピフォン・カジノ、
そしてこのJ‐160Eの3本
を思い浮かべると言っていいだろう。
このモデルは、ビートルズがデビューした1962年、
当時のリバプールのラシュワーズ楽器店に注文し、ジョージとおそろいで購入したものである。
その後ジョンはすっかり忘れている間に自分のJ160Eを盗難され、
映画「ハード・デイズ・ナイト」や「ヘルプ」などの時期にはジョージのギター(73161号)を借りて弾いていた。
しかし、製造番号を見ると、もともとジョンのギターだったものが何時の間にか入れ替わってジョージのものになっていたらしい。
あの人たちが自分のギターのシリアルb覚えていたとは思えない。
入れ替わってもなんの不思議もないのだ。
かわいそうなジョン…。
私は都合3本の160Eを買ったり売ったりすることになった。
これもまた異常な体験だ。
1本目は、東京は下北沢の楽器屋で安く見つけた1967年製だった。
ヘッド角度は14°。
サウンドホールの周りのロゼッタは二重で、「ツー・リング」と呼ばれるものだ。
見た目は綺麗でいかにもだったが、
音のほうは中音域が強調されすぎて、レコードなどでの160Eの音のイメージは無かった。
その後、いつもの楽器店で下取りとして出た1964年製の160Eを手に入れた。
見た目はほとんど1本目と同じだったが、
ネックがより太く、ヘッド角度は17°だった。
こちらの方が断然音が良かったので、1本目は売り、しばらくはこれを弾いていた。
ある夏のこと、雑誌の広告で
ヘフナー・キャバーン・ベースの「オールド」が安く(?)売りに出されているのを見て、
東京の駒場にある怪しい楽器店を訪れた。
(まだあるのかな?あの店・・・)
しかし、その楽器は既にプロのミュージシャンによって買われてしまっていた。
残念無念。仕方なく帰ろうということになった。
店員はせっかく来た私に別のヘフナーのオールドなどを何本か見せてくれたが、
どれもピンと来ないもので、がっかりした。
そんな私の表情を見てとったのか、最後に奧からごそごそ出してきたのが、
この3本目の160Eだった。
製造年は1962年。シリアルbヘ(オーバーラッカーで読み取りずらいのだが)72308と見える。
ジョン達のものより若干古いようだ。
「ワン・リング」と呼ばれる一重の輪は我々マニアの憧れの的であった。
手に持つと、64年型よりもさらに太く、しっかりしたネック。
そして甲高い高音域が強調された音。
まさに、初期ビートルズから後期まで通して使われていたあのアコースティックの音である。
金額はかなりしたが、2本目を下取りに出して(笑)購入した。
ペグが3つ(オリジナルの方は経年変化でシュリンクしている。)交換されているし、
オーバーラッカーされているので、コレクターズ・アイテムとは言いがたい。
しかし、ジャカジャカ弾いて楽しむには十分すぎるギターである。
GIBSONJ-160E (Just like John Lennon Owned)
('62 Serial No.72308?)
←サウンドホールです。
中に「J‐160E」とスタンプが押してあります。
何もラベルはありません。無いのがオリジナルだそうです。
これよりも古い個体だと、製造番号(性格にはFON=ファクトリー・オーダーナンバー)がネックブロックに打たれていますが、これにはもちろんありません。
→ヘッドはこんな感じ。
ジョンたちの62年型より、ペグが若干下よりについてます。
この後、マイナーチェンジがあったようです。
第一、彼らのトラスロッドカバーはネジ一個で止められていますが、それもその時期固有の特徴なのでしょう。
←シリアルbヘヘッド裏に。しかし、よく読めねえ。
右列のペグがオリジナルで、縮んでます。左は後付け?でも一応シングルラインです。
※後に交換しました。