2005年12月 「KLUSON-DELUXE」 

 珍しい部品を手に入れた。
 ギブソンのギターに多く使用されていた、いわゆる「2コブクルーソン」である。
 このタイプは、1960年に使われ始めて、1964年に裏ぶたのロゴが2列に分けられた「ダブル・ライン」までの期間に作られたものである。
 ちょうど、ジョンとジョージが購入したJ160Eは1962年型だったために、この2コブ・クルーソンが付いていたのである。
 私の160E君のペグもこれと同じタイプなのだが、硬化剤の配合具合によってつまみ部分(ペグ・ボタンという)が異常に縮むものがあり、、場合によっては
縮みすぎて自己崩壊し、バラバラになってしまうものもあるのだ。

 ご他聞にもれず、私のJ160のペグも低音弦側の3つが縮み(シュリンクと呼ぶ)、今にも崩壊寸前だったのである。

 この左の写真から分かるとおり、縮んだものともとの大きさのものとでは2周りぐらいの大きさの差がある。しかも力を入れてまわすと折れてしまいそうな予感がするので、チューニング時など必要以上に神経をとがらされる羽目になるのだ。

 ずっと探していたのだが、ついに見つけ出した。それも6個そろいでの発見である。ラッキーだ。
 オリジナルと同じ1列クルーソン。ボタンがオリジナルか交換かは判断付かなかったが、とりあえず見た目には大差なし。日常の使用を考えれば交換しても価値が下がったことにはならないだろう。ということで、とりあえずシュリンクした3つだけ取り替えることにした。
 

 写真の左が元の状態。右列が縮んでいるのが分かるだろう。
 右の写真は交換後の写真。色味等の違和感もなく交換できた。
 
 ちなみに、このペグは1962年製らしいが、裏のパテントナンバーはD−169400で、年代が違ってもこのナンバーは不変のようだ。だから本当はいつのものかは分からないのだ。
 裏ぶたの穴(グリス補充用か)は会社名のつづりであるところの
「KLUSON」の「O」の位置に空けられており、無理やりクルーソンと読ませるようになっているのがご愛嬌だ。
 縮んだペグも保存しておき、いつかボタンを交換できれば、と思っている。これでもきっと、いつかは誰かが必要とする日が来るかもしれないのだ。交換部品箱の中で、次の出番を待ってもらうとしよう…。


2006年1月 「トラスロッド・カバー」 

 写真上は、私のJ-160Eに付いてきた、自作品みたいなトラスロッド・カバーである。なんだか素材がぺなぺなで、非常に格好悪い。
どうせレプリカするんなら、もっとしっかりした素材でやればいいのに
 たぶん、元の持ち主が、ジョンのJ-160Eの仕様に近づけんがために行ったのであろう。彼のギターはなぜかトラスロッドカバーがねじ一本止めなのである。なにか過渡的な仕様変更に当たる時期だったのか、トラスロッドの埋め込み位置の関係なのか、定かではないが。

 今回、1960年代の正しい部品を手に入れた。それが下のトラスロッドカバーである。釣鐘のようなその形や、素材、厚さなども、1963年のJ−50と似通っており、たぶん本物であろう。ねじ一本はおまけに付けていただいた。

 下のねじ穴は元の持ち主によって埋め木されていたので、もう一度きりで穴を開けなおし、新トラスロッドカバーを取り付けた。うーん、気分がいいねえ。

 新年の幕開け、気分も新たに今年も「ビートルズ・ギター狂街道」を突っ走ろうと思いまする。
 みなさま、本年もどうぞよろしくお願いいたします。
 
 今年の目標は、
「MP3などで録音し、実際の楽器の音をHP上に公開する」というものです。現在その機材を物色中。
 近い内にできるといいのですが。その前に…
「弾く腕のほうを鍛えろよ!」という声が聞こえてきそうです。


2012年12月「Gibson‐J50/ピックアップ交換」

さて、2012年のクリスマス。
アコースティック・ライブに参加することになり、
最近出番の少なかったギブソンJ50を使うことに。
 ところが、
やはりピエゾをセラミック・ブリッジの下に仕込んでいるので、
音がじゃっかん固めでキンキンするのだ。
 これを解決するには、
 最近はやりの「マグネティック・ピックアップ」に交換したほうがいいのでは?と思い、
今回オークションで競り落としたフィッシュマンをつけることにしたのだ。
まず、今付いているフィッシュマンのピエゾを取り除かないと。
セラミックブリッジのしたにセンサーが貼りつけてあるのだ。

Accoustic Matrix U ってやつである。
かれこれ10年くらい使っただろうか。
これを剥がし、コードを切る。そして、電池ボックスと
エンドピンに一体型のプリアンプ部分を除去。
これで普通の「アコギ」にいったん戻るのだ。

このピエゾのコードは、アジャスタブル・ブリッジのねじ穴を通してあったのだ。

 今回はこれを除去したので、ブリッジをオリジナルの状態に戻す。
 

 ※ちなみに、この「プラスティック・ブリッジ」は
 ポール御大のテキサンの元のブリッジと同じだが、
 よく「音が最悪」などと評されている。
 
しかし、構造上はこのプラスティックにセラミックブリッジはまったく干渉していないので、
 ※レス・ポールのように、2本のスタッドボルトでフローティングしている。
 自分は
あんまり音に影響は少ないのではないか?と考えている(笑)。

  
ブリッジを元に戻せたら、
 今度は
新しく手に入れたピックアップ、
「フィッシュマン・レアアース・ミックス」のコードを適度な長さにカットし、

 ジャックに半田付けし直す。

 
このピックアップはコンデンサー・マイクと、スタックハムバッカーのミックス機能があるので、半田も3点付けとなる。


できたら、ジャックをエンドピンの穴に取り付け、(すでにフィッシュマンのAccoustic Matrix NaturalU用に開いてた)
ピックアップをサウンドホールに取りつけます。

これで一応完成。

アンプにつないでちょっと音出しを。

大丈夫、無事にマイクもハムバッカーも音が出ている。
ブリッジも久しぶりにオリジナルに戻り、
なんだかちょっと嬉しい気分。
やはりピエゾが挟まっていないほうが音が生き生きしている。

あとは、
実際のライブ音量でハウリングしないかどうか、
などはこれから経験を積むように情報収集していく必要があろう。
取りあえず、
アコースティックライブでは小出力アンプにつないで演奏したが、
なかなかいい音を出してくれていた。
マイクの空気感と、マグネティックの力強さをどのようにバランスさせるか、が、音作りでは課題となるであろう。

 ライブではDIでの音づくりなども含めて、これから精進していきたいものだ。

2020年8月「Gibson‐J50"PLEK"に出す」

1996年に、12万という破格で(笑)購入以来、ほぼほったらかしで使ってきた63年製J-50であるが、
いよいよバランスが崩れて弾きづらくなってきた。
ローフレットではなかなか良い音がするものの、
ハイフレットではすべて音つまり。
これは以前からネックが「元起き」しているからで、
ネックアイロンではどうにもならなかった部位なのである。

そこで、前回4001でお世話になったGLIDE様に、
リフレットと指板調整+PLEK処理を依頼したのだ。

PLEKは、弦を張った状態でも精密に指板のゆがみやフレットの高さを計測し、
それを自動で削って最適な高さにそろえることのできるドイツ製マシーンだ。
これで、わが相棒J-50も生き返るに違いない。

これが作業前に計測したデータ。あきらかなハイ起きの状況だ。
赤くなっているところは危険領域。弦がフレットに当たっている。
















これをPLEK処理したのが2枚目。
フレットを抜いて指板をまずフラットにし、
ハイフレット部分もしっかりと調整されたので、
全ての弦でしっかりと振動をさせられるようになった。

オールドギターは材が枯れている分、
いちど指板を削って調整すれば、
この後は長い間、ネックは安定してくれるはずである。

帰ってきたJ-50君。

指板が削られて、
でこぼこなった表面には綺麗な木目が現れた。

弾いてみると、
例のざらざらした質感のギブソンサウンドはそのままに、
より低い弦高で弾きやすくなり、
さらに響きやサスティンも向上していた。
まさに「PLEK最高!!」である。



今後、バランスが崩れて弾きにくくなったギターは、
こうやって早めに対応し、ベストな状態を維持できるよう、気を使って行きたい。

私が預かっているこの楽器たちが、
私がこの世から去った後にも、長くその音を響かせ続けてくれるように。
そのためのリレーの中継ぎの役割を
しっかりと果たしたいものだ。