老年期U 「ヘフナー500/1オールドを買う」 の巻

 
リッケンバッカーのオ‐ルドを入手して以来、
「こうなったらヘフナーもオールドを…」
という欲望に目覚めた私は、それを探し始めた。

 そんなある日。(多分12月だった気がする…。)
 大阪の有名なビートルズ関連楽器ショップM○○という店の広告に、
 はっと目が止まった。
 そこには、ポールと同じ
’62/’63年仕様
 (めんどうくさいのだが、ポールの楽器は'63年製造でありながら、’62年仕様の部品を使っているので、マニアからはこう呼ばれる。)
 が掲載されていた。
 
 しかも
「ヘフナーブック掲載品」!?

 ヘフナーマニアなら全員が買ったと思われる(笑)英語版のそのヘフナーブックを見ると、
 たしかに同じ楽器が写真入で紹介されている。
 きっとこれをもっていたどなたかが放出なさったのであろう。…

 ※2005年9月、元の持ち主が判明!横浜のO氏でした。ご連絡ありがとうございました!!


 63年の本物か?電話で店の方と話してみると、かなりのレアものらしい。
 
 どうしよう?!ええい、どうせ買うなら、思い切って買っちまえ!…ということで、とうとう購入してしまった。
 値段もそこそこ高かった。
 しかし、これで晴れてリッケンバッカーとヘフナーの「オールド対決」が実現したわけだ。
 めでたしめでたし!

 こいつの特徴はナンといってもそのレアなスペックだ。
 オリジナルの
2ピースネック
 残
念ながらポールと同じ2in1のチューナーは付いていなかったが、
 この時期は2タイプが混在しているらしい。
 ※のちに手に入れて交換。 

 そしてオリジナルの
ツイードのケース付属。
 これは当時イギリスでヘフナーの代理店をしていた、
 「セルマー」楽器店が作ったケースで、
 (セルマーケースと呼ばれる所以である。)
 ポールも同じケースを使っていた。

 また、シリアルb焜Zルマー社用に独自につけていたが、
 こいつには
203(か208)と読める番号が刻印されている。
 (100〜349が62年から63年にイギリスに輸入されたものだ。)

 たぶんオーバーラッカーされているし、
 例のヘフナー弱点部分には
ネック修理の形跡も見られる。
 しかし、やはりこの手触りには勝てない。
 リイシューよりもネックは太くてしっかりしている。

 また、ピックアップも力強い感じだ。 思ったよりも中音域の強調された
野太い音を発生する。

 
 そして、マニアたる私が一番注目しているのは、ジャックの穴の位置である。

 コントロールパネルとの位置関係で見て欲しいのだが、
 上に置いてあるリイシュー(20/40Aniv)はほぼ中央に位置しているのに対し、
 オリジナルは
テールがわに寄って斜めに空いているのがお分かりだろうか?

 ちなみに、ポールのヘフナーの写真もチェックしたが、やはり斜めの位置にジャック穴が開いていた。
 この時期の共通する仕様なのかもしれない。
 ※のちに、world history で再現された…。 
 さらに、ポールのものなどオリジナルのベースには、
 この時期赤いワッシャーが使われているが、
 リイシューにはこれが無いのである。


 フロントのピックアップをとめるエスカッションは低いタイプ。
 リイシューでは一時期、フロントにも高いものが使われていた。
 最近はちゃんとしたと思うが、もしかしたらリアのエスカッションを前後逆にしただけだったのかもしれない。
 うーん、いやらしい。
 
 フィンガーボードは木目が縦に入るローズウッド。
 時期的には「ハカランダ」と呼ばれるブラジリアンローズウッドが使われていた可能性が高い。
 
 こんな
どうでもいい部分にこだわるの
は、私がとうとう行き着くところまできてしまった証拠といえよう。
 そして、資金の調達もままならなくなった私は、そろそろオールドギター地獄に別れを告げる時が近いことを察知したのであった…。


Hofner500-1 (Just like Paul McCaretney Owned)
('63 Selmer Serial No.203)

 正式には、ヘッド裏にセルマーbェあるもの(イギリスに正規輸入されたもの)を、
 500/1とは呼ばず、「バイオリン・ベース」と呼ぶのだそうな。

 今までの調査によると、シリアル
172号は3Pネックで、
 へフナーブック内の
198号(もっている方は22ページ参照。フランス人のオーナーは1979年にイギリスで95ポンドで購入したらしい。今では考えられん値段だ!!)も3P。
 某バンドのシリアル
201号は3Pネック。
 某楽器店で売られていたリフィニッシュの
211号は2Pネック。
 シリアル
350号は3Pネックであった。

 要するに、2Pネックと3Pネックは同じ時期に混在して作られたということでしょう。
 情報によると、職人の手が不足すると、他のバイオリン工房にネックだけ外注していたことがあるらしく、
 2Pネックはその外注先の工房が作ったものらしいとな・・・。
まじかいな??
 
 海外オーナーのシリアル263号は1963年末期の番号らしいので、私の203号も63年後期のものと考えられます。
 (ボディーデートから、
10月29日と判明。11月製造ぐらいか…)
 ちなみにポールは1963年7月ごろに入手したのです。シリアルqナってあるのかな?
 ※63年
7月1日のEMIスタジオで撮られた写真では’61年型ベースを使っていますが、
 
7月16日のBBCパリススタジオでは’63年型を使ってます。
 ということは、この間の2週間で入手した可能性が高いということですよね。

  コントロール内のPOTデートを見ると、フロントは
393(1963年39週。9月頃か)リアは501(1961年50週。12月)です。
 リアのポットは部品のストックを使ったとして、一応フロントはシリアルと適合していますね。
 ちなみにシリアル211号のPOTデートは
352(1962年35週)。
 ポールのベースのポットは
283という情報も(実際に修理したマンドリンブラザーズの情報)。やはり63年7月ごろか?
 
 また、シリアル310号が
173、シリアル350号が453と、ポットコードはかなり入り乱れているのがわかります。
 当時は部品供給という点では現代のように「必要な数だけ必要なときに」というわけにはいかなかったのでしょうね。
 おかげで誕生日特定はとても困難です。

これがオールド500/1のコントロール裏。茶色いベースプレートに生産ロットナンバーが入っています。

→ちなみにこの右のはリイッシュ物のコントロール裏です。なんだか味気ないのがお分かりですかな?基本的な配線の仕方は変わっていないように見えるけどね。


☆双子のボディー
←この左の写真を見てみましょう。
左がおフランスの198号。
右が私の203号です。

 この双子具合はどうでしょう。材木の模様が一緒じゃありませんか?!
 微妙な違いはあるものの、もともとプライウッドでできているので、
 同じ模様の木を薄く加工して表面に張ったはず。
 だから、シリアルが近いとこのように同じ模様の楽器ができる場合がのあるです。

 しかも、ポールのBassよりも若干ネックヒールの部分が長く、セットが浅いのもそっくりです。
(ポールのは16フレットジャストでボディーについてますが、
 この2本は16.5ぐらいの感じです)201号のボディーも見てみたい!
 たぶん三つ子でしょう。

 ポールのBassはこの2本よりも前に作られた可能性が高いです。しかし、なんでこんなに仕様が変わっちゃうのでしょうか?

ポールのヘフナーヘッドとの比較。
 背景の白いのが「ビートルズ・ギア」に載っているポールのヘフナー。
 私の203号機と合成してみましたが、どうでしょう?
 厳密に同じ角度で撮影していないのでなんともいえませんが、
 左右のバランスやペグの位置などは、198号や203号に近い気がしますね。
 セルマーナンバー344号あたりは、
 ヘッド下回りの形状がスリム化して、えらの張り出しが弱いように見えます。ペグ位置も低いです。
 
 総合的に判断して、ポールのヘフナーは
@198号より前(1963年夏以前)に作られている。(ネックのつき方がやや深い点から考えても)
Aヘッドシェイプがスリム化される前の仕様、
 ということが考えられます。


この楽器の最新情報はコチラ