おまけ 「VOXアンプ関係の無駄使い」 編
エレキギターを初めて買ったときには、確か10Wのアンプを買った。
グヤトーン(東京サウンド?)だった。
ベースに転向すると、先輩からZip60とか言うアンプ(これもグヤ)を押し売りされた(笑)。
今思うと異常にでかく重かった。
それが調子悪くなったので、楽器屋で渋いアンプを探していると、
フェンダーの’59ベースマン(ツイード)が目に入った。
店の人いわく
「これは本来ベース用だが、ギターでもいい音が出るため、あなたのような両刀使いにはもってこい。」
だと。買った。
しかし…。あのビートルスの独特の音には全く似ていない。
(当たり前か)数年間はベースマンで過ごしたが、弾けば弾くほどヴォックスが欲しくなってくる。
しかし、新型のTBXなどはいまいちだという人もいる。うーん、しかしオールドは高そうだ…。
などと悩んでいても仕方ない、とりあえず見に行こう、ということで東京の楽器屋までアンプを探しに旅に出た。
VOXを扱う某有名な店に行き、相談すると、「新品とほぼ同じ値段で’60年代のAC30は買える」という。
そこで
「自分はギターもベースも弾くのだ」
というと
「AC30にはベース用もある」(この当時は知識が無く、AC30に数種タイプがあることなど知る由も無かった。)
と言われ、’64年製のAC30/Bなるモデルを薦められ、購入した。
このアンプのおかげで、ヴォックスのアンプに詳しくなった。
真空管に付いても色々勉強したし、修理も自分で多少やった。
しかし、ギターをつなぐと高音域がこもる。
アメリカの楽器屋で売っている配線図を取り寄せて比較してみたら・・・
AC30Bと普通のAC30Nでは数箇所だけコンデンサーが換えてあるのである。
(私はスピーカーが強化されているだけと勘違いしていた!)
早速問題の箇所をNのコンデンサーと同等のものに換えてみた。
すると前よりはギターらしい音が出るようになった。(このアンプはその後オーバーホールした。)
数年後、プレイヤー誌の広告を見ていたら、関西地方の楽器屋の広告に古いAC30が出ていた。
それは、本で見て憧れていた「後付けトップブースト」モデルで、しかも’63年製だった。
前述のAC30Bは売っちまえ!と思いすぐ電話したが、
「あいにく買いたい人がもういる。」
と断られた。あきらめきれず、連絡先だけは伝え、「もしキャンセルしたらぜひ私に」と言っておいた。
数日後、電話に留守電が。連絡してみると、
「値段の折り合いがつかず、前の人があきらめたので、よかったら。」
とのこと。私だって金なんかない。しかし、ここで断ったら一生出会えない
(これ、オールドギター好きの鉄則というかいつもの言い訳?)と、購入した。
届いたアンプの電源を入れ、ギターをつなぐと…。
長年の夢だったあのビートルズ初期の音が、狭い私の部屋に(というか近隣一帯に)響き渡ったのである!感動!!
写真の’65年製AC100(キャビはT60)、さらに数年後購入した物で
状態は決してよくない(トランスが交換されている)が、
音は一応出ている。
コンサートでベースを弾く時はこれを使っている。
重い割りに音量は小さく、これではグヤトーンの時代に逆戻りである(笑)。
結局、AC30Bも売らなかったので、現在我が家にはAC30が2台とAC100が1台、
そして、楽器屋でベースマンと取り替えた’71年製ツインリバーブが、
狭い我が家をさらに狭くするために鎮座ましましているわけである。とほほ…。
VOXAC-30N Top-Boost/AC-100 Super Beatle
('63/'65)
最近のリイシュー物と大きく違うのは、このコーナーのつくりである。
「パーフェクト・コーナー」と呼ばれる、プロテクターなしの仕様なのである。
また、貼られる黒いカバリングも「スムース・ビニール」で、
表面のでこぼこが非常に少ないタイプであり、
後ろの穴からのぞくトップブースト回路と合わせて、
60年代前半のいわゆる「ビートルズ仕様」である。
このアンプは大阪から取り寄せました。
その時の包みには大きくマジックペンで
「最高級アンプ!代替品なし!要注意!」
と書かれていました!なんと大袈裟な。
(でも少しうれしかった…)
シリアルナンバーは6929 N。
Nは「ノーマル」の意味です。
これ以外にB(ベース用)T(トレブル・モデル※トップブースとは違う、別設計のトーン回路が入っているモデル)がありました。
スピーカーはブルーのアルニコ・スピーカー2発(530T)。
セレッションのスピーカー製造コードは18DH。
これは1963年4月18日製造を示しています。
※ちなみに、64年製AC30Bの方のシルバー・アルニコは(T1088)30FJ。1964年7月30日製造のスピーカーです。
アンプ自体のシリアルナンバーは15386 B。
単純に計算して、1年4ヶ月の間にシリアルが8457番ぐらい進んでいる計算になります。
このシリアルナンバーから製造年代を割り出すのは、非常に難しいそうです。
会社に記録簿が残っていないのだろうな・・・。
もし通し番号だとすると、月産約470台。一日に15〜20台とすると、計算上、あってる気がしますね。
上部の熱気を逃がす穴には、真鍮でできたベンチレーターがはまっています。
64年になるとこれが黒いプラスチック製に換わってしまいます。とにかく、隅から隅までお気に入りの1台です!
AC30を上から見ると、こんな感じです。
コントロールパネルが茶色というより赤茶色で、
海外では「キャンディ・アップル・レッド」などと呼ばれているものです。
(同じタイプでも、もう一台の64年生まれはもう少し赤味がなく、
より茶色に近いです。)
基本的には、日本国内100Vでの使用は考えられておらず、
私は一番近い115Vのセレクターを選んで使用しています。
真空管は、いまや貴重なEL84が4本。(これだけで数万円)
イギリスのMullard社製が欲しいのですが、
異常に高いので、私はTesla社製(たぶんチェコ)を使っています。
でも整流管とプリアンプにはMullardをつぎ込んでるよん!
トーンコントロールはカットしか付いていないので、
基本的にはセッティングは「ない」と思ったほうが正解。
私は、トーンはフル10にして、あとは裏のトップブースト回路で調整するか、ギター側のトーンやvolumeで調整します。
このAC100は65年製と思われます。
AC30に比べてさらにシンプルです。
1チャンネルしかないので、コントロールは
volume、
トレブル、
ベースのみ。
(回路的にはAC30のトップブースト回路と同じです。)
こいつはEL34を4本積んでいます・・・というと、マーシャルなどとおなじでいかにもすごそうに聞こえますが、
実際にはパワーが出きっていません。
多分トランスなどの状態が良くないからでしょう。
※最近、マーキュリーマグネティクス社の出力トランスに換装したところ、
見違えるように音が出るようになりました!!
スピーカーキャビネットはT‐60型で、
上に12インチのグレー・アルニコ・スピーカー(AC30と同じもの)
下に15インチのスピーカーが搭載されています。
ま、ベースアンプとしては大した事ありませんが、
雰囲気的にはもうポールになりきりモードで演奏できます!