PCS3071「Help!(Stereo)」の巻
 
"Help!"
Release:August 6th,1965

Matrix No.:YEX168-1/YEX169-1
Stamper/Mother No.:AH(37)/3, HG(71)/3
Weight :165g
Tax Code:KT
Jacket: Garrod & Lofthouse Ltd.

「Hard Day's Night」からは、stereo表示が横38ミリ×縦5ミリの「middle stereo」になっている。このアルバムでは白抜き文字。

 4トラレコーダーによる録音も2年目に入り、いよいよ多彩な録音が施されるようになったのがこのアルバムからである。
 それを如実にあらわしているのは何をおいても
「ポールのリードギター弾きたがり」現象(笑)であろう。
 前作までは、ボーカルとベース、手拍子、そして「ミスタームーンライト」でのハモンドオルガンの演奏にとどまっていたオールラウンダー(ポール)が、多重録音の甘い味を知ってしまったのだから手のつけようがない。
 このセッションでの第1曲目は「涙の乗車券」であるが、トラック割からすると、このような順で録音されている。
1 リズムギター=ジョン
2 12弦イントロ=ジョージ
はトラックNo2に同時録音されているのに対し、
3 間奏ギター=ポール
4 ベース音ギター=ジョージ
がさらにトラックNo4に同時録音されているのだ。
 たぶん、トラック4を録音時に「どっちがリードを弾くか」でもめたはずである。しかし、結局ポールのほうが
「これは俺の方がうまく弾けるんだから俺に弾かせろよ、ライブのときはお前が弾けばいいだろ?」的にジョージが丸め込まれたのではないだろうか。恐ろしい権力争いである(笑)。

 これを機に、もはや「同時に4人で演奏することの必然性」が失われ、逆に
「ライブでの再現性なんか関係ない!面白ければ何でもやっちまおう」的に変わったのは事実であろう。事実、ジョンのキーボード、ジョージのガットギターとエレキの多重録音、ポールのリードギター、外部ミュージシャンによるフルート演奏など、もはや4人では再現不可能なアレンジが続き、しまいにはポールのソロ作「イエスタディ」を生み出すことにつながっていくのである。
 おかげで、ジャケット裏の曲名紹介のところには"(electric piano:John)"だの"(guitar:Paul)"だの"(Steinway:Paul and George Martin)"だの"(Guitar:Paul and string quartet)"だのという表示のオンパレードとなってしまったのである。せっかくのリードギタリスト、ジョージは、せっかくリードを弾いても「それが当たり前だから」特に表示もされず・・・である。
 映画「四人はアイドル」のエンディングで、ジョージが何度も
「"I Need You" By George Harrison! "I Need You" By George Harrison!」と叫んでいるのは、このような状況下に置かれたストレスを発散するためだったのではないかと考えられる(笑)。

 ステレオ盤とモノ盤の大きな違いは以下のような点である。

①「ユーライクミートゥーマッチ」のイントロのドラム音がない。
②「ヘルプ!」のボーカルはモノとはまったくのテイク違い
③「イエスタディ」のサビのボーカルは、MONOはテイク3、ステレオはテイク2を中心にしたダブルトラック
 
レーベルの変遷については、以下のようである。


タイプ1-A 字体がサン-セリフ体で、「I Need You」の後ろに*マークが付いたもの。
(この写真のタイプ)
    1-B 字体がNTR(ローマン)字体になったもの。
    1-C 字体がサンセリフに戻り、「I Need You」の前に*マークが付いたもの(66年中期ごろに変更)
   
2 「Sold In U.K~」(リマーク)がなくなったもの(1969年)
オリジナル1965年盤を求めるならば、
タイプ1-Aを見つければ確実である。


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