青年期T 「カントリージェントルマンを買う」 の巻
前述のリッケンバッカー360/12を注文した店に、えらく高い値段がつけられたグレッチのギターが3本あった。今から思えばすごい景色だったのだが、デュオ・ジェットとシルバー・ジェット、そしてこのカントリージェントルマンだった。
私はひと目見たときから、このギターに魅せられてしまった。
まず、そのでかさ。無駄に大きいそのボディには、手書きで描かれたFホールが誇らしげである。いかにも役に立たなそうな二つのミュート。
ボディー裏には、今にも切れてしまうそうな黒いパッドがボタン止めされている。前に「ビートルズ百科」で見た記事には、「〜本物のサウンドホールはボディー裏面にあり〜」などと無茶な説明が書かれていたが、完全にふたをされているのでこれはセミ・ホロウボディと考えた方がよい。
恐る恐る店主に「弾いてもいいか?」と聞くとOKとのこと。
壁から外してもらい、初めて手にしたその感触たるや、今まで新品しか買わなかった私を、オールドギター地獄に誘い込むのに十分であった。
皆さんならこんな時、何を弾くだろう?私は迷わず、「オール・マイ・ラビング」の間奏(ジョージのソロ)を弾いた。同じだ。同じ音が出る!(腕はかなり落ちるが…)欲しい…。しかし値段が…。
そんな私の迷いに追い討ちをかけるように、店主がささやく。
「これねー、チープ・トリックのリック・ニールセンの所有だったんですよ。
ほら、直筆サイン入りの写真があるでしょ?…」
見れば、その写真には
「Dis Country Gent is Beauty. Give it A Good Home」
(このC・Gは綺麗だろ。こいつにいい家を与えてやってくれよ、的な意味?)という言葉とサインが。
彼は有名なギター蒐集家である。そんな彼からの放出品とあれば、高いのもうなづける。
ううん、ここは何とか値切れるところまで値切って…。
粘ること数時間。最後には半ば「キレかかる」店主相手に、他のギターと2本同時に買うから、という条件で、リーズナブルな値段で売ってもらった!
実は始めに付いていたタグの半額に近かった!
今では考えられない値段である。
なんと感謝してよいやら。
(同時に買ったそのもう一本というのが、後述するキャバーン・ベースである。)
シリアルbヘ50311。
資料によれば’62年製になる。
ジョージが所有した2本のC・Gの内、1本目のいわゆるダイアルアップ・ミュート(ビッグ・ミュート)の写真(アンソロジーbook内)をチェックすると、4万台後半(47628と読めるのだが・・・?)の数字が見られる。
ほぼ同時期に作られたといえるだろうが、色はかなり違って明るめのブラウンである。また、金メッキが落ち銀色になってしまっている部品が多く、歴戦の傷跡を残している…?!
※2019年1月、主要部品を再メッキしました。
GRETSCH 6122Chet Atkins Country Gentleman
('62 Serial No.50311)
←ヘッドの表と裏→
です。
グローバー・インペリアル・ペグが存在感あります。(メッキは無い。)
ネームプレートにややゴールド・プレートの面影が残ります。が、チューナーにはもはや金めっきの痕跡すら残っていません。もしかしてわざと磨いて落とした?のかも。
そのネームプレートにシリアルbェ打刻されています。
ペグは老朽化しており、チューニングはかなり心もとないです。(チョーキングの多用はキケンかも?)→後にNOSのチューナーに交換しました。
←ボディーの表と裏→です。
ゴールドバックのピックガードは、透明な素材のプラスティックに裏側から金色の塗装を載せてあります。グレッチにありがちなピックガードの亀裂が始まっております。
→後に、NOSのピックガードに交換。
ダブル・マフラー(ミュート)はスポンジ?部分が縮み、今や役にはたちません。しかし、見た目はやっぱり「付いてて良かった。」でしょうね。
→ボディーの裏はこのような「パッド」がボタン止めされており、外すと白いふたが…。パッドの種類は普通は黒い合成皮革のものなのですが、1962年の一時期、この布製のパッドも使用されていました。珍しいみたいです。
「白い裏ぶた」をあけると、中にミュートシステムの(システムというよりは「からくり」といったほうが適切かも。)バーなどが見え、いざという時ここを開けて修理、という感じでしょうか。このふたにも「〜マチック」という名前と特許があるらしく、パテント173,177と刻まれています。