壮年期T 「エピフォン カジノを買う」 の巻

 
 「カジノ」は愛称で、正式な型番は、
E230TDという。
 Eはエレクトリック、
 230は?、
 Tはシン(Thin)・ボディ(ボディ厚が薄いこと)
 そしてDはダブル・ピックアップのことである。
※しかも、現地アメリカでは「カジノ」ではなく「カシーノ」と呼ぶらしい。

 ヘッドとピックガード以外の形や仕様は、
 同時期のギブソンES330TDとそっくりである。
 ギブソンに買収された後のエピフォンは、
 ギブソンの姉妹ブランドとして、同じ工場内で作られていた。

 製造番号も統一されている。
 私のは
803029番(ブルーラベル)であるので、
 資料によれば’66年製ということになる。

 ジョンの使用していたのは’65年製である。
 最も大きな違いは、’66年は
ヘッド角度が14°であるのに対し、
 ’65は17°であることだ。

 ジョンはリッケンバッカーを多用していたイメージがあるが、
 実際はデビュー後は63年から65年までのたった2年である。
 それに対してカジノは65年から70年の解散まで、
 また解散後も使われつづけたので、
 実際は10年以上になるのであろう。
 つまり、
リッケンよりも付き合いが長いことになる。

 エピフォンは一時期ブランドが途絶えていたのを、
 工場を日本国内に移して生産したり、
 その後は
韓国で再生産して売り出していた時期があった(70〜80年代)。
 そのころのカジノも良くできていたが、
 ネックがマホガニーで無かったりして、かなり違う印象があった。

 私は手に入れるなら
本物がいいと思っていた。
 いつも購入しているオールドギターショップの店長に、
 「モノが出てきたらすぐ教えて」
 と頼んでおいた。
 1996年、いつもの楽器屋さんから職場にTELがあった。
「下取りで出てきたカジノがあるんだけど、
 今別のお客さんが来て『欲しい』と言っている。
 もし
買う気があるなら、今すぐ値札を外す
 (つまり
売却済みにすること)。」
 なんてことだ!こんな日に限って…。
 しかし、ここで引き下がるわけには行かない・・・。
 思い切って「買う!買う!」と答え、売却済みにしてもらった。


 仕事が終わった後、すぐに楽器店に直行し、やっと実物を見た。
よいこの皆さん、こんな買い方はいけませんよ
 思った以上に綺麗だった。傷もほとんどなし。
 ネックは65年よりもやや細いかもしれない。生音でもかなり大きな音がする。
 これはいい、と思いその晩のうちに持って帰った。


 ジョンはいつもこんな使い方をしていたのかもしれない。つまり、
@自宅で作曲する時にはアンプに通さなければ生音が大きいアコースティックとして。
Aコンサートでは思い切りフィードバックして激しい音が出るエレキギターとして。
Bレコーディングでは、はやり始めたファズやディストーションをかけやすいギター。
 しかもネックが細身なのでリフが弾きやすい。まさに理想的ギターであったのだろう。 



EPIPHONE
E-230TD
CASINO
('66 Serial No.803029)

←ヘッド角度は14°残念ながらジョンのとは違います。
 また、ナットの幅は’64〜’65は41mmだそうですが、この’66はどう測っても40mmしかありません。
 たった1ミリですが、グリップの感じはだいぶ違ってきます。(やたら細く感じます。)
 
 それにしても個性的なヘッドのシェイプです。
 私の知り合いには「この形が嫌だ!」という方が結構居ます。
 しかし、わたしたちビートル・フリークはこの妙に長いヘッド以外には見向きもしません。

→シリアルbヘ、ヘッド裏にスタンプと、
 ボディー内部のブルーのシールに押してあります。


 ピックガードのEマークは立体で、ジョンの平面とはちと違います。残念…。

 ボディーの色合いは濃い部分がかなり残っており、
 まるで新品のようです。
 同じく66年でも、時期(前半か)によってはかなり色が抜けて、
 「ティーバースト」みたいになるものも多く見受けられます。
 ジョージのカジノ(65〜64年?)もかなり早い時期に色が抜けていました。
 ※あの楽器は「ロイヤルタン」色だった可能性も。
 
 音は、やや癖あり、という感じです。
 リアP.Uにしてもそれほど硬い音は出ません。
 逆に、あの「ゲットバック」の甘い音、フロントピックアップの太い音などは得意のようです。
 シングルコイルのP-90も、なかなかやりますな…。


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