2007年12月 「エピフォン・カジノのブリッジ」 の巻

 11月の忙しさを切り抜けて、ちょっとギターをいじるゆとりが出てきた。
なにせ、一ヶ月にライブを2本入れてしまったからだ。
それに、その一本目はあの
「山本コウタロー」氏の前座と言う大役だったのだ!
 緊張はしたが、いい経験になった。プロと言うものの心構えを目の当たりにした。
第一、お客さんがみな笑顔で帰っていくのだ。音楽をしていて最高の瞬間だろうと思う。

 さて、今回はエピフォン・カジノのブリッジを交換してみた。
 写真右がもともとついていたABR-1。
ギターと同じなら1966年製であろう。
左は、今回入手した樹脂サドルのABR-1で、ニッケルめっきの1963〜4年製らしい。
 
ジョン・レノンの使っていた1965年製カジノにはこの樹脂サドルが使われていたのは周知の事実。最近のリイシューもこれに倣って「ナイロン・サドル」が載せられている。
私のカジノははじめからブラス・サドルが載っていたのだ。
 こうして入手してみると…
このサドルは
少なくとも私たちが知っている「ナイロン」ではない。
 あのような透明っぽさもないし、硬度ももう少し硬い感じがする。
 色はつや消し白。表面には、素材から削りだしたような跡もあり、現在のものとは全く違うようだ。
 
アジャストナットのはまる穴も、大きさがかなり違う。
 1966年はやけに穴が大きくなっているではないか。
 この1964年製や、私のSGについている1965年製の穴は小さいのだ。
 この穴がオリジナルかどうかも分からない。誰かが大きくしたのか
(何のため??)
 もしオリジナルだとするとかなり大きな変更ではないだろうか。
 
 さて実際に楽器に取り付けてみると、ブリッジの両脇のスタッド穴の位置が微妙に狭いらしく、
 ちょっと苦労した。しかし、一度填めてしまえばナントカなりそうだ。
 これで高さを調整し、オクターブチューニングを施し、さて弾こうと思ったら古かった1弦が切れてしまった。
 はい、おしまい。ストック箱にちょうどいい弦が無かったので、今日はあきらめて明日買いに行こうと思う。

 カジノついでに、P90のふたを外してちょっと磨いておいた。
 このピックアップの耳の部分に、小さな黒いフェルト生地が乗っている。
 これがカバーとの間に挟まるスペーサーの役目をしているらしい。原始的。
 もしかしたら絶縁の役目もしているのかもしれないが、ねじ穴でつながっているからそれは無いかな。

 樹脂サドルとブラスサドルの音の違いについては、後ほど弦を交換してからじっくり味わってみたい。
 


2011年2月「ジョンのカジノの鈴」 

 生まれて初めて「手芸店」なるものに入った。
 意外や、色々なものが売っており、男の私でも楽しめる空間であった(笑)。
 今度はぜひあのマスコットのキットを買って・・・ブツブツ・・・。

 そんな話はさておき、なぜ私が手芸店行ったのかというと、この鈴の赤い紐を買うためである。
 以前についていた紫の紐が切れたため、そのまま放置していたのだが、
 やっと直す気を起こしたのである。
 
 本来は、「人絹」みたいな組みひも(?)がついていたのだが、太い紐は邪魔になるので、今回は細い紐を買って付けてみた。色も、ジョンのつけていたのと同じ赤である。

 1966年に来日したときに、
 もしかしたら面会した日本人からもらったのか、
あるいはホテルから脱出した際に手に入れたのかも知れない。日本人ならば、どこにでも売っていて見たことのあるあの竹で作った籠に入った鈴である。

 ジョンはこれを「幸運を招くお守り」と思っていたようで、その後のアメリカツアーではずっとこれをカジノにつけたまま演奏していた。

 右の写真は最終公演となった「キャンドルスティック・パーク」の画像であるが、はっきりと鈴が写っている。

 その後、イギリスに帰ってレコーディング生活に入っても、
 この鈴はカジノに付けられたままだった。

左の画像は、
「サージェント」録音のころのジョンの写真であるが、
まだしっかりと鈴がぶら下がっているのが分かる。
よほど気に入っていたのであろう。

 しかも、ジョンはカジノのボディー裏とネック裏を塗料でスプレーしまくったようで、こんな状態になってしまったのだ(笑)。

 カラーの方を見ると、はみ出した塗料(白か銀だろう)がカッタウェイの内側に見えている。
 なんちゅう雑な塗り方だろう・・・。

 結局この塗料を落とすに当たってカジノは表面の塗装を全部はがされて、あのナチュラル仕上げになってしまうのだ。
 そのころのカジノと鈴の写真がまだ見つからないのだが、
 その過程できっとこの鈴も一度はずされてしまったに違いない。

 日本国内ならば、200円程度で手に入る、とてもお安い「民芸品」であるが、
 
「ジョンが愛したお守り」ということになれば、きっと「お守り」としてのご利益もあるのではないだろうか?
 ぜひ、皆で買ってカジノに鈴をぶら下げよう!!


2012年1月「ジョン・レノン"Roof-Top Strap"考(笑)」

2011年11月に、一本のストラップが発売された。
それは、アメリカの”Trophy Strap”社が作った、ジョン・レノンがあの「アップル屋上コンサート」時に使っていた、
ACE社製のいわゆる”ヒッピー・ストラップ”のリイシューである。

アメリカの知人などもその製作に絡んでいたということで、私も一本購入してみたのだった。
届いたのは、右の写真のような製品。

聞けば、実物が無いので、映画”レットイットビー”などの画像から読み取り、
再現をしたのだそうな。
60年代のものと比べると、若干平板すぎる表面は気になるところ。
コンピューターで造られた模様を、これまたコンピューター制御された織り機で織った感じ。
たしかに、色柄はビビッドでいいが、ちょっと(?)マークであった。

そんな私の目に留まったのは、
これまたアメリカの別会社のストラップ。

 これは、確実に表面がでこぼこしている。
 いわゆるヒッピーストラップの定番の刺繍である。

 縁の白線も、トロフィー社が1本なのに対し、
こちらは細い線が2本平行に入っている。

 説明を読むと、「こちらの方が本物と同じパターンで作られている。裏地も、本物と同じ合成皮革で出来ている。
最近売り出された『まがいもの』のストラップにはみんなでNoと言おう。
などと過激な説明である。値段的にはトロフィー社よりほんの少し高い。
 ※トロフィー社は69.95ドル・・・こっちは79.99ドル。10ドル=
約800円差である。
研究のためにこっちも入手してみた。

さて、両者を並べて観察してみると、いくつかの点で差があることに気づく。

まず、表面の処理である。
右の画像の、上が新しい方のストラップ。
下の方がトロフィー社製のストラップである。
刺繍で表現された新ストラップに対して、
トロフィー社の方は平面的で、凹凸のすくない処理をしている。
縁の白いラインの違いもはっきり見えるであろう。

さらに、大きな違いはこの「模様」の大きさと数である。

引きの画像でみてもらおう。
上が後で入手したもの。下がトロフィー・ストラップである。
明らかに模様の大きさが違う。同じ長さで比較すると、
トロフィーの方は金の模様が13個に対して、新しい方は
19個も入っている
また、ギターを吊る部分のレザーの形も、トロフィー社の方は五角形の大きな形になっていて、
オリジナルの形状とは大きく異なるのである。

では、どちらがよりジョンの使っていたものに近いのか。
これは、もう実際の画像から見て取るしかない。

そこで、「Let It Be Box」の写真集からとった画像などを参考に、
模様の数などを調べてみた。

左が体の全面の画像。
例の「金模様」が最低でも6個確認できる。
右の方は背面からのショット。
リンゴのシンバルの陰になって見えない部分もあるが、調節用の金具までの間に最低8個の模様が入っている。
これを、先ほどのストラップの画像と比較してほしい。

・・・トロフィー社のストラップでは、この数は絶対に並ぶことができないのだ。
要するに、
模様が大きすぎ、少なすぎるのである。

ちなみに、身長172センチの私が適切な位置にカジノをつると、この新ストラップだとちょうどジョンと同じ数くらいの模様がそろうのを確認した。

ということで、
鳴り物入りで発売されたトロフィー社製の「ルーフトップ・ストラップ」であったが、
実際には別会社のレプリカに敗北するという結果になってしまったのである。

しかし、トロフィー社のストラップにもよい点はいくつかある。それは
@幅が広いのでベースなど重いギターを吊るのには最適。
A裏地がコットン織りになっているので、滑りにくく、使い心地がよい。
B皮部分とストラップ部分の接合部などの作りが高級でよい。
C模様がくっきりしていてビビッドなので、ステージ映えする。

このようなことである。

最終結論としては、
A:究極のレプリカは、トロフィー社ではなく、新しい方の製品である。
B:トロフィー社の方は柄は間違っているが、ストラップとしての基本性能は勝っている。
と、このような感じでまとめておこうと思ふ。