中年期V 「ギブソン J−50を買う」 の巻

 生まれて初めて買ったギターはどんなギターだったか。」
 これはギター弾きにとっての「
ルーツ」であり、きっと何歳になっても忘れない思い出の一こまであろう。
 
 私の初めて買ったギターは、
中学1年生のとき、テストの順位か何かと引き換えに、
 「赤羽楽器」(笑)と言う楽器屋で買ってもらったモーリスのフォークギター、W−25であった。
  (この型番はもちろんグレコ同様、値段
2万5千円の25である。)

 当時はエレキギターは「
不良の小道具」といった先入観が強く、(あの「横浜銀蠅」全盛の時代である!)
 とうてい家族の同意は得られない。それに、弾けるかどうかも分からんものにそんな高い金を払えるか、という
親の不安もわからないでもない。
 だから、当時はずいぶん立派なギターを買ってもらったと感じていた。
 (こいつは今でもちゃんと売らずに?持っている。自分の
記念碑だから。それにこのギターを持ってイギリスまで歌いに行ったのだ!)

 そんな「フォークギター」から卒業することになったのは、
 例のオールドギターショップでのギブソンJ−50との出会いからであった。
 
こいつはとにかく見た目はぼろかった。

 表面はびっしりとラッカーチェックが入り、まるで
マスクメロンの如し、である。
 またこの時代のものとしては珍しくはないらしいが、ブリッジが
プラスティックである。
 (ポール・マッカートニーがイエスタディで弾いたエピフォン・テキサンも同様)
 ネック裏の塗装は剥げ、場末のクラブでブルースマンに酷使されてきたことをはっきりと示していた。
 
 しかもそれは
北海道のお客からキャンセルされて送り返されてきたかわいそうなギターの、
 まさにその到着日であった。
 店主は、
 「安くするから買いなよ。絶対損しないよ。」
 とのたもうた。
 確かに、この楽器で十万円台は安い。
 それに、アコースティックのいいギターに憧れる気持ちは十分ある。
 思えば私の初めての「ギブソン」である。
 考えた挙句、ついてきた紙ケース(この時代のギブソンの廉価版ケースときたら…
バラバラ状態であった。)を別のケースに換えて貰うのをおまけにして購入した。

 このギブソンの名器、合板トップのフォークギターに慣れた耳で聞くと、かえって音が響いていないようにも聴こえてしまうのが不思議だ。
 きっと
中低音域が強調されるからだろう。

 ボディー裏には確実に振動が伝わってくる。「
腹にビリビリ響く」というのがもっとも適切な表現かも。
 見た目も悪いし、元値も安いし、使い勝手を良くしようと、悩んだ挙句、数年後思い切って
ピエゾ・ピックアップを埋め込んだ。
 音的にはとても「らしい」音が出る。これでステージでも使用OKだ。

 このギターの登場によって、モーリスW-25は屋根裏部屋でお休みすることになった…。



GIBSONJ-50ADJ/BRIDGE
('63 Serial No.120209)

←ヘッドは160Eなどの上級機種と比べると小さくコンパクトに作られてます。
 GIBSONのロゴもデカールで、貝のインレイではありません。

また、ペグも3連ペグですので廉価版だということが分かります。
 しかしこれはこれでヘッドの重量が軽くなるため、音に何らかの効果が出ているともいえるでしょう。

 
→ごらんの通り、アジャスタブル・ブリッジを取り外し、ピエゾマイクを仕掛けてあります。
 ネジ穴がブリッジの下にあるので、加工なしでいけました。元に戻そうと思えば、ジャック穴は別として現状に戻すことも出来ます。

 このブリッジ台座はプラスチック製。
 経年変化でややトップを引っ張って浮き始めています。ポールのテキサンと同じですが、決して威張れるものではありません。音も良くないと評判です。

 いつか、お金がたまったら、ちゃんとトップを平らに修正してあげたいですね。
 ラッカーの色がいい飴色に変色してきています。
が、表面は前述したように「マスクメロン」のような状態です(笑)。

 
※2012年12月、ピエゾを取り除き、新しいピックアップに交換。
 それに合わせ、ブリッジはストックの状態に戻しました。