R5055「"She Loves You/I'll Get You」

Release:August 23rd,1963

Matrix No.:
7XCE 17395-1N/
7XCE 17396-1N


Stamper/Mother No.:
RHP(276)/3
RTM(294)/1
Tax Code:MKT
Sleeve:Greensleeve C-type

 ビートルズ4枚目のシングルで、
初のミリオンセラーである。
 この前のシングル同様、ちょっと後期のスリーブ入りで残念。
 このスリーブは、パーロフォンのロゴの下が「グラモフォン」に替えられているので(タイプC)、1965年後期からのものだと思われる。
 レーベル面の特徴は、円周の文字が小文字混じりの「Parlophone」で、初期タイプであることである。しかし、さすがはミリオンセラー、初期のこの時点で、スタンパーはすでに3ケタである。1枚のスタンパーで約2000枚プレスするらしいので、A面のマザー3番、そしてスタンパー276番ということは、単純計算でいくとこの時点で少なくとも3×276×2000=
165万枚はプレスされていた計算になる。ミリオンどころではなく、レアでも何でもない数である(笑)。

 面白いことに、前のシングル同様にこのシングルもまずB面曲「I'll Get You」(全然関係ないが、
「サルゲッチュー」というゲームが昔あったが、今はどうなったのだろう?懐かしい…)の方が「A面候補」として先に書かれたものである。
※レノン‐マッカートニー…さすがにすごい進歩をする人たちなので、
1曲目よりも2曲目、2曲目よりも3曲目の方が良い作品になる運命だったのだろう。
 この曲の歌詞が面白い。前作は2曲とも「ファンへの愛の言葉」だったのに対し、今度は
「振り向いてくれない女子への宣戦布告」(笑)だからである。
 自分がどれだけ愛しているか、君を必要としているかを切々と歌いあげ、サビでは「
resign yourself to me(もう諦めて僕に身をゆだねなさい)」ときたもんだ。
 要するに、「何があっても君をモノにするから逃げても無駄よ」という、ある意味ストーカーまがいの歌詞であるが、これを、「まだファンになり切っていない女子へのアピール」と考えるとこれまた面白いではないか。前作で取り逃がした女子も、これで完全にキャッチである(笑)。ただし、ここでもまた禁じ手「最終兵器ハーモニカ」に頼ってしまったことが、この後の曲の運命をB級にしてしまった感が否めない(爆)。
 A面曲「She Loves You」は1963年の
ツアー中、ニューキャッスル・アポン・タインのホテルの部屋で一気に書かれたというのが有名なエピソードである。まあ、話半分くらいに聞いておこう。
 ここまで「Love
ME do」「P.S.I Love You」「Please Please Me」「Ask Me Why」「From Me To You」「(I)Thank You Girl」「I'll Get You」と、「I/Me」ばかりの展開だったことから脱却を図り、主人公を3人称Sheにしようと考えたらしいが、さすがシングル曲7曲連続の「一人称」にはさすがに耐えられなかったのだろう。
 そして、ハーモニカも、である。
 そこで考え出された、いきなりドラムのフィルだけのイントロと、第2の最終兵器
「イェーイェーイェー」である!
 彼女を傷つけた友人と、偶然…を装い彼女に会いに行って話を聞いてきた親友との会話…という設定が、
すでに後期の
ポールあたりの「ストーリー・テラー」的才能の開花を感じさせるではないか!
 ここにすでに「エリナー・リグビー」への片鱗が見えるのだ!!
 「it is up to you」(君の責任だぜ)「it is only fair」(俺が公平に見てもさ)
 「pride can hurt you,too」(自尊心は自分を傷つけるぜ)「Apologize to her」(彼女に謝れよ)
3番のこのあたりの歌詞は韻を踏みつつも男同士の会話として生々しく、最高である!

 ところで、間奏らしい間奏もないここまでのシングル曲・・・。リード・ギタリストとしてのジョージの活躍は、本当に「リフ」に限られている。
 しかし、そのリフに命をかけるように、音色やタッチで勝負するジョージの演奏なくして、
これらの名曲は完結しないのだ!