R5084「"I Want To Hold Your Hand/This Boy」

Release:November 29th,1963

Matrix No.:
7XCE 17395-1N/
7XCE 17396-1N


Oreole Press
Stamper/Mother No.:
none/3
none/1
Tax Code:KT
Sleeve:Greensleeve A-type

EMI Press
Stamper/Mother No.:
ALH(387)/17
AMR(342)/10
Tax Code:KT
Sleeve:Greensleeve A-type

Decca Press
Stamper/Mother No.:
none/3
none/11
Tax Code:KT




ビートルズ5枚目のシングルで、初のアメリカ・ヒットチャート1位シングルである。
マザーの数やスタンパーの桁を見てほしい。今までにないすごい数である。
それだけこのシングルの爆発力が大きかったことの表れだし、デッカやオリオールに外注しなければプレスも間に合わなかったという話がよくわかる。

 アメリカのヒットチャート上位を狙って作曲した、というのがすごい。狙って作曲できるもんじゃないでしょう?普通は。天才の証明。
 当時ジョンと同じアパートに住んでいたカメラマン、ロバート・フリーマンが聴かせた「前衛音楽」のレコの影響で、
「針跳び」するようなイントロやさびが生まれたというのが、嘘のような本当のような話で伝わっているが、実際にはこの間「She Loves You」でも「She Loves You Teah Yeah Yeah~」の3連続技は使っているのだが(笑)。
しかしまあ、「アンソロジー」にも、このイントロを何度もリハーサルする様子があるので、かなり造りこんで意識したものであることは間違いないだろう。
3拍目裏から出ると言うのは、実際バンドで演奏する時も結構リズムをとれない人も多いのである。

 さてせっかくなので、この3種類のシングルを並べてみようではないか。
下手な合成で申し訳ないが、左がデッカ盤で、右は通常のEMI盤である。
デッカ盤の特徴である、太い切りこみと中央カットアウト部の幅広い段差が分かるだろう。
デッカ盤の方がブ厚いという都市伝説もあるが、測ってみたら重さは同じであった(笑)。

 右の画像は、オリオールとEMIの比較である。
 オリオール盤も、切りこみ部分の幅が広いのが特徴だ。
 カットアウト部分は段差がきわめて端に寄っていて、表面には無数の凸凹模様がある。これが特徴である。
 こっちも測ってみたが、重さは同じであった。多少違ったとしても、元が100グラムの世界であるから
その差に気付くのは無理だろう。

このように、多少の違いはあれど、ほとんど同じシングルを、3社が協力してプレスしたというところに、ビートルズのすごさが表れているのだ、ということにしておこう。無理して集めるようなことはなさらぬように(笑)。

 歌詞の方は、いたってストレートな恋の歌である…と言いたいところだが、
歌詞に何度も出てくる
「something」が問題である。
 「何か言いたいことがある」男が、それを言うときに君の手を握って言いたいと、こういうわけだ。
 2番でその答えが出てくるが(彼氏にしてくれ…云々)なぜか相手に
「Please Say To Me」(俺に言ってくれ)と頼んでる(笑)。
 そして、3番では
「You Got A Something」(君も何か感じるものがあるだろう?)と、かなり自意識が出ている。
 面白い歌詞だ。とにかく、君に触れているだけでとってもハッピー、という、スキンシップの大切さを訴えた歌詞なのである。

 B面はあの名曲「こいつ」である。この邦題を見たときに「?」マークがついたのは当時私がまだ子供だったからだ。「That Boy」を「あいつ」と訳すのだろうから、
「This Boy」を「こいつ」と訳しても問題なかろう。
 しかし、歌詞を読み、ジョンの叫びを聞くにつけ、「This Boy」=「この男」は婉曲的に
「自分」のことであり、
自分のことを「こいつ」と呼ぶかどうかはいまだに疑問である…。
 おいしい三声コーラスが素晴らしいが、特に真中のジョージのパートが良い。もしも私が「どこでも好きなパートを歌いなさい」と言われたら、間違いなくジョージのパートを歌うだろう。それくらい重要かつ面白いパートなのだ。そう、ビートルズの三声コーラスは、ジョージの
中間パートなくしては完結しないのだ!