PCS7009「Revolver(Stereo)」の巻

"Revolver"

Release:Augusut 5th,1966
Matrix No.:YEX605-1/YEX606-1
Stamper/Mother No.:GP(16)/1, GP(16)/1
Weight :180g
Tax Code:KT
Jacket: Garrod & Lofthouse Ltd.
 
 このアルバム、雰囲気はなんとなく冬っぽいのだが、売り出された日は真夏の8月5日。ちょうど日本ではビートルズ来日の余韻も熱いころだった。

 武道館のステージで見せた、もはやアイドルとは呼べない「けだるい」雰囲気の4人組。ラバーソウルで予感されていたとはいえ、当時のファンは一曲目に
「税金」の話を聞かされてどのように思ったのだろうか、興味は尽きない。

 1曲目だけではなく、2曲目以降も暗い歌詞が続く。
 2曲目・・・「教会で死んだオールド・ミスの葬式にはダレも来なかった・・・」
 3曲目・・・「眠れないので天井を見つめている。誰も邪魔しないでくれ。」

 こんな感じである。これ以前のアルバムで、冒頭3曲が全部マイナー系というのは無かった。
いきなり「ダークサイド」なアルバムになっていたわけである。

 しかし、サウンドは(使用アンプが変わったため)前作からは劇的に変化している。
 特に、ディストーションサウンドに貢献したのは新しいVOXのハイブリッドアンプ(プリアンプがトランジスター式で、パワー部が真空管のもの)に搭載されていたMRB(ミッドレンジブースト)回路である。

 今回はこの「曲順」にこだわってみよう。
 これらの曲を録音に取り掛かった順に並べてみると
①Tomorrow Never Knows(ジョンの実験的チャンレンジ)
②Got To Get You Into My Life(ポールらしい明るいブラスロック・チャレンジ)
③Love You To(ジョージらしいインド風チャレンジ曲)
ここまでは一人一ずつ新しいチャレンジ曲を出してみたということか。
(この間にシングル用Paperback Writer, Rainをはさんで)
④Doctor Robert(ジョンのストレートでややサイケ志向なロックその1)
⑤And Your Bird Can Sing(ジョンのストレートでややサイケ志向なロックその2)
ここはジョンの手持ち(シンプルな曲)を先にやっつけた?
⑥Taxman(ジョージのストレートでやや暗いロック)
⑦I'm Only Sleeping(ジョンのヘビーでやや暗いロック)
⑧Eleanor Rigby(ポールのヘビーでやや暗いロックwith弦楽四重奏)
⑨For No One(ポールのやや暗いバラード)

この4曲が実際にはアルバムの「ダークな」方向性を作った部分であろう。
⑩Yellow Submarine(リンゴ用の明るいお遊び曲)
⑪I Want Tell You(ジョージの明るいロック)
⑫Good Day Sunshine(ポールの明るいロック)
⑬Here,There And Everywhere(ポールのやさしげなバラード)
⑭She Said,She Said(ジョンのストレートでややサイケ志向なロック3)
セッション後半はポールが活躍している。
 
これをアルバム用に並べなおすに当たっては
①Taxman(ジョージのストレートでやや暗いロック)・・・仮にG(ジョージ)としよう。
②Eleanor Rigby(ポールのヘビーでやや暗いロックwith弦楽四重奏)・・・P(ポール)
③I'm Only Sleeping(ジョンのヘビーでやや暗いロック)・・・J(ジョン)
と3人の暗い曲オンパレードで始め、
④Love You To(ジョージらしいインド風チャレンジ曲)
⑤Here,There And Everywhere(ポールのやさしげなバラード)
⑥Yellow Submarine(リンゴ用の明るいお遊び曲)・・・R(リンゴ)
⑦She Said,She Said(ジョンのストレートでややサイケ志向なロック3)
と、さらに一人一曲ずつ明るいほうの曲をまわしてA面終了。

B面では
①Good Day Sunshine(ポールの明るいロック)
②And Your Bird Can Sing(ジョンのストレートでややサイケ志向なロックその2)
 と、ポールとジョンが明るい曲で始めておいて、
③For No One(ポールのやや暗いバラード)
 ポールがやや落ち着かせ、
④Doctor Robert(ジョンのストレートでややサイケ志向なロックその1)
⑤I Want Tell You(ジョージの明るいロック)
 でまた盛り上がりを作ってから
⑥Got To Get You Into My Life(ポールらしい明るいブラスロック)
⑦Tomorrow Never Knows(ジョンの実験的チャンレンジ)
 でポールとジョンが実験曲をぶつけてくる・・・こんな構成になっているのだ。

 こう見てくると、曲順といってもよくよく考えられていることがわかるし、セッションの途中から「このアルバムはこういう方向性で行こう!」となってくるのもうかがえるのである。こんなことを考えながらアルバムを聴きなおしてみるのも悪くないだろう。
 レーベルの変遷については、以下のようである。

 1-A B面「Doctor~」が「DR~」とミススペルされたもの(この写真のタイプ)
 1-B 上記のミスプリが直されたもの(通常盤)
 1-C A面曲目の「タックスマン」と2曲目「エリナーリグビー」が横に並び、表示が「曲名‐歌い手‐出版」の順に変えられたもの。
 
1969年になると「SOLD In UK~」(リマーク)がなくなる

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