黎明期 「グレコVBを買う」の巻
小さい頃から音楽には興味があった。
最初に自分で買ったレコードが「泳げ!たいやき君」であったことは、ちょっと年がばれるのでまずい話題である。
シモンマサト以外に私の心をつかんだ音楽と言えば、ザ・ビートルズしかなかった。
友人宅で偶然に聞いた「Let It Be」に打ちのめされた。
家に帰ると、親にせがんでビートルズのシングルレコードを1枚買ってもらった。
親は親切心から、名曲の誉れ高い「イエスタディ」を選んでくれた。
家にとんぼ返りして聞いてみると、想像していたのとは違う暗ーい歌だったのでがっかりしたのを覚えている。
(しかもB面はリンゴのアクト・ナチュラリーだ!小学生に判れというほうが酷というものだ。)
しかし、気を取り直して私はそのイエスタディの歌詞にカタカナでふりがなをし、意味もわからず暗記した。
しまいには、ポールの呼吸のタイミングまで暗記してしまった。
中学生になり、買ってもらったラジカセ(死語になりつつある)で、ラジオのビートルズ特集はほとんど聴き、録音した。
レコードは高い。これならカセット代で済むのだ。
フォークギターで弾くために「ビートルズ100」という楽譜も入手した。ほとんど弾けなかったが(笑)。
高校生になり、ビートルズ・シネ・クラブ(多分、現ビートルズ・クラブ)に入会した。
初めて見た、動くビートルズ(ハード・デイズ・ナイトの映画)に、また打ちのめされた。
買ったパンフを穴が開くほど見た。ちょうどその頃「ビートルズ百科事典」なるものを入手したため、とっかえひっかえ眺めていたら、
彼らの使っている楽器がひどく珍しいもので、しかもルックスがいいということに初めて気付いた。
この時だ、私が「彼らと同じギターが欲しい!」と思うようになったのは…。
しかし、子どもの小遣いで買えるような代物ではなかった。
まして当時は今ほど輸入楽器は身近でなかった。
リッケンバッカーなど、どこに売っているのかさえ分からなかった。
私は自分のギターの腕前が上達しないことに限界を感じ、ベースに興味を持ち始めていた。
(当時ブラスバンドでチューバなどを吹いていたこともある。)
当然、ポールのバイオリン型ベースが欲しくなるのであった。
1985年、念願だったバイオリンベースを手に入れた。
しかしそれは、ポールのヘフナーではなく、グレコの作ったVB−70(?)などという名前のコピー商品だった。
(それにしてもなんという名前の付け方だろう。VBはViolin・Bass、70は定価7万円のことだなんて。)
私はこの愛器にひどく満足していた。いまでは郷愁すら感じる。
この楽器は数年間私のバンド活動の支えとなったが、その後友人に貸し、今は行方不明となってしまった。
※最近(2010)、友人が今でもちゃんと保管していることが判明!!
今思い出しても作りは良くなかったし、利点といえば「普通のベース弦」が使えることぐらいだが、
「グレコ」という名を聞くたびに、あの楽器を手に入れたときの感動がよみがえるのである。