幼児期 「ヘフナー500/1をローンで買う」 の巻

↓これ、よく見ると、59年モデルとある。見た目は62年モデルだったのだが…

 谷口楽器の名前入りのはがき大の紙。
  
 これは、1990年に私が初めて手に入れた「本物の」ヘフナーベースギターに付いていた保証書である。
 シリアルbヘ261769。

 
 当時私は大学生であった。
 それまで使っていたグレコのVBは酷使によって塗装も剥げ始めていた。
 それ以上に、私にヘフナーを欲しいと思わせたきっかけは、本物のヘフナーを弾く機会があったからである。
 
 それは、私よりもやや年上のビートルズコピーバンドの方が持っていたもので、
 コントロール・ノブが黒い、いわゆる当時の標準モデルであった。
 

 初めてそれを借りたときのことは忘れない。
 そのベースは、まるででできているように軽かったからだ。
 VBはホロウ・ボディであるにもかかわらず、重かった。それに比べてヘフナーは…。
 差は歴然としていた。「本物でなくちゃー意味がない!」私はそう思い込んでしまった。!!

 早速、楽器屋に行き、ヘフナーを入手する方法を尋ねた。
 そこの店長はとても親切な人で、平成2年当時私の住む地域ではまだ品薄だったヘフナーについて色々調べてくれた。
 私がこだわった「ちゃんとしたノブ」のついたものが当時谷口楽器とヘフナーとの共同企画によって造られ、’59年仕様の500/1モデルとして売り出されたという情報を教えてくれ、わたしはそれを注文し、手に入れたのだ。
(この楽器店は私一人のためにヘフナー純正の弦を在庫してくれていた。しかもかなりまけて販売してくれたので、とても助かった!!)

 まさしくそれは、私が数年間探しつづけていたものに思えた。
 私はグレコではない本物のヘフナー、しかもちゃんとしたポール・マッカートニー仕様を持っていることに誇りさえ感じていた。
※余談だが、当時のグレコではヘフナーの本物にグレコのロゴを入れた「ドイツ製グレコVB」を売っていた。
 一体何本売れたのやら。こいつも黒いノブだったので、私は興味を持たなかった。

 さて、この「59年モデル復刻版」は、名前に反してどちらかというと「62年モデル復刻版」だった。
 ロゴはデカールで、レイズドロゴではなかったのが本物ぽかった。
 ピックアップもポールのものとよく似ていたが、それを止めるエスカッションはやや大きく
 コントロールパネルも後期の大型のものが付いていた。
 ネックも良く見ると5ピース構成で、本物のポールの仕様とはかなり違っていた。
 (当時はその違いにさえ気付かなかった。)

 この後このヘフナーは長い期間私のメイン楽器として使用されることとなった。
 しかし、時が経つにつれてやつれたことと、さらに本物に近いモデルの登場などにより、売却してしまい、もう手元にはない。
 あの楽器が今でも誰かの手に渡り、音を出しつづけていることを望む・・・。