2002年総集編
3月
 S800coupeMk−Iとの対面

 子どものころからの夢の車、S800。パソコンを買い、インターネットで初めて私が検索した言葉、それは「S800」であった。
 それから数年間、色々なショップを覗いたり、雑誌の個人売買の欄を眺めたりしながら悶々とした日々を送っていた。
 オーストラリア帰りのS800が入庫すると聞き、某ショップに出かけた私は、運命の対面をすることとなった。以前から右ハンドル・リジッドアクスルのクーペを探していた私にとって、まさに探していたモデルそのものがこのクーペだったのだ。しかも前輪にダンロップディスク。ダンパーにはコニの黒が付いていた。これ以上の仕様があるだろうか?
 数時間を車を眺めて過ごした後、私は売買契約書にサインをしていた。賛成してくれた妻に心から感謝を。そしてここから全ては始まったのである…。


 始めは、この車には輸出仕様の白いウィンカーレンズがついていた。また、アンダーフロアを見ても
タイコがなく、代わりに紅い筒が2本。前オーナーの改造だろう。もし音が割れるようなら、直してもらうことにする。
 キャブレターは評判がいいという30F。フルトラ仕様だったが、万が一の故障の対策として、敢えてセミトラにしてもらうことにした。それに、夏のオーバーヒート対策に、ボルト・オンタイプの電動ファンを追加してもらうことにした。オーバーホールはエンジン全バラと、デファレンシャルギア。
 程度が良いことを祈りながら、ショップの方にお願いした。
 
購入価格は…ここではあえて明らかにしないが、中型車の新車が買えるほどだと思って欲しい。決して安くはないが、他に乗りたい車がない私にとっては妥当な値段だと思う。それに今買わなければもう程度のいいSには出会えない時代になってしまうかもしれないから。
 さあ!夢にまで見たS800!公道を走る勇姿が見られるまで、もう少しの辛抱である…。


5月〜8月 ひたすら待つ…

 いよいよS800はエンジンとデファレンシャルギアのオーバーホールをすることになった。

 契約をすませてから数ヶ月。この「待つ期間」も楽しかった。いろいろなSに関する文献を集め、少しでも知識を増やそうと努力した。特に役立ったのは「ASファイル」という本。埼玉のKOMI‐REPRO‐GARAGEというところが発行したものだ。エンジンの細かな部品までオールカラー写真入りで載っており、これでだいぶ立体的にエンジン構造を知ることができた。大枚はたいて買った甲斐があった!
 作業が見たくて、地元からショップまで片道6時間掛けて何度も見学に行った。
 そのたびにショップの方は嫌な顔一つせず丁寧に説明してくださった。そんな様子を見ているうちに私も妻もショップの方への信頼を増していった。
 
私のようなメカオンチには、頼れる専門家の存在はなくてはならないものだ。


8月 ナンバー取得!!

 8月も終わりに近づいたころ、エンジンが仕上がったSは予備車検を終えて私のところにやってきた。
 いよいよナンバーをつける為に陸運局に搬入する。買う前は「800」番を付けたいなどと考えていたが、やはり「普通にさりげなく」が一番と思い、通常のナンバーに。結果は「8743」。
 古い車のため、所得税は0円。ドアミラーは右1個のみ。(輸出仕様のまま)これでOKなのか?!などといっているうちに手続きは滞りなく進み、封印をされて万事OKになった。これで日本の公道を遠慮せず走れるようになったわけだ!!

 無事ナンバーをつけ終えたら、即近くの道をショップの方を乗せて練習走行することに。このときの感動は忘れられない。数ヶ月待った後だけに、感慨もひとしお。田んぼ道を時速40キロほどで走る。クラッチは軽いが、ブレーキは倍力装置が無いため、かなり強く踏まないと止まらないような気がする。アクセルとブレーキペダルが近いため、気を許すと両方踏んでしまいそう。幅の狭い靴をはかないと…。
 ショップの方から、主な注意点を聞く。
@オイルは3000キロ毎に交換。WAKO’Sの4CRが良い。(これは高いオイルだ! !)
A水温計が180(私のはF°表示)を超えたら要注意。電動ファンを回す。
Bキャブレターの関係でかぶりやすい。いよいよかぶったらプラグを抜いてシンナーで清掃。 プラグはD7EAかD8EAで。(私は始めの頃は7番でした。最近は8番でちょうど良い焼け具合です。)
Cオーバーフローしたらガソリンホースを抜いてみる。フロートのニードルに噛んだごみが、それで落ちてオーバーフローが止まる場合があるから。 等々…。
 一度には覚えられないので、徐々に理解していくことにしよう。こういうとき、メカオンチな私は
知ったかぶりをしたくなる傾向がある。分からないことは分からないと、割り切って考えないと。「聞くは一時の恥、…」まさに金言である。
 こうしてSとの生活がスタートした…。


 数日後、早速妻と福島県までドライブに出かけた。しかし、妻はエンジン音と熱さにやや嫌気がさした模様。その後は乗りたいとはいわなくなった。初?のトラブルは、「ウォッシャーのホースが抜けて」車内にウォッシャー液がたれたこと。すぐに気付いてインパネ裏のワイパーの付け根に差し込んで修理終わり。


9月〜10月デフから油が…

 走り回ったあと駐車していると、車の後軸の下に油のしみができていることがあった。これは?と思い下にもぐってみると、どうもデファレンシャルギアのケースから漏れているようである。とりあえずボルトを増し締めしてみると、やや漏れは減ったが止まりはしなかった。仕方ないので、スプレー式のシール剤を吹き付けて応急処置をした。

 その後、ショップに持ち込み見てもらったところ、ケースを止めているボルトとともに使用していたスプリングワッシャーの「切れ目」からオイル漏れしていることが判明。
 このSの場合、ボルトの先がケース内に貫通して出ており、そこからねじ山をつたわってオイルが外に出て、スプリングワッシャーの切れ目からたれるという状況だったのだ。原因がわかるとすぐに平ワッシャ‐を一枚かませ、元通りにしたらぴたりと漏れは止まった。
 Sは年代によってこのような構造のものや、スプリングワッシャーでもOKのものがあるらしい。なるほど…。とにかく、軽症だったのは良かった。


11月 スターターモーター焼ける!!

  夏が過ぎ、涼しくなり始めた10月頃から、エンジンの始動が一発で決まらなくなった。
逆に言えば、それまでは何も考えずにただキーをひねれば一発でかかっていたわけである。
 寒くなってくると、さすがにチョークなしにはかからなくなる。しかし、このチョークの引き具合が私には全くの未知の領域であった…。
 ものの本によると、多くの人々が「Sのエンジンはかぶりやすい、一度かぶると再始動は困難…」といったコメントを残している。かく言う私も、秋ごろから急に寒くなった朝の始動にてこずるようになった。かぶらせないようにチョークを遠慮がちに引き、アクセルペダルにちょっと足を載せてスターターを回す…。キュルキュルキュル…。しーん…。再度チャレンジ。キュルキュルキュールキュール。(回転が遅くなってくる)「おや?まずいぞ?もうバッテリーが弱っている。もう一度…。」キュールキュール、カチカチ!(マグネットスイッチからの音)「…。」これで終了。バッテリー充電器のお世話になることに。プラグを抜いて見ると真っ黒にカーボンが付着、さらにガソリンでびしょびしょの状態。

 
そんなことを何度か繰り返すうちに、スターターモーターに過大な負荷をかけてしまった。ある日、仕事場から帰ろうとSに乗り、エンジンをかけようとしたところ、全く反応がない。電気は生きている。しかし、スターターはうんともすんとも言わなくなった。確かその日の朝、エンジン始動の時にモーターから異音がしていたことを思い出す。これはスターターが逝かれたに違いない。これではもう手のうちようが無かった。仕方なく妻の車を救援に呼び、牽引して押しがけならぬ「引きがけ」をし、家まではたどり着いたが、もう動けなくなってしまった。しかもその日からバイク通勤を余儀なくされた。
 2週間後、妻の車に伴走してもらい、2台でショップまで出向いた。途中でガソリンの補給が必要な距離だったし、一度エンジンを止めるともう引くしかないから…。
 ショップでスターターを見てもらったら、案の定、ブラシが焼けきれていた。とりあえずそれを新品に交換してもらい、さらに、新型のモーターを購入、取り付けてもらった。(元のモーターは予備として保存)これは純正よりも小型軽量のもので、耐久性もあり、私のような「素人」向きとのこと。値段は高かったが、背に腹は変えられぬ。
 また、そのモーターはアルマイト処理されたベースに取り付けられており、アースが不十分かもしれないとのことで、自分で表面を少し削り、アース線を後で付け足した。
 それ以降、モーター系のトラブルは起きていない。バッテリーさえしっかりしていれば、かなりの高回転でエンジンを目覚めさせてくれている…。


12月 エンジンがかからない?!

 前々から、雨の日になるとエンジンが掛かりにくくなることがあった。ある時などは、夜の道ばたでストップしてしまい、いくらイグニッションをまわしても全くかかる様子が無い。
 このまま止まっていると後ろから来たトラックにでも追突されてオダブツである。仕方なく、シ端の駐車場まで妻と二人で車を押して止め、ボンネットを開けてみた。特に変わった様子はない。しかし、イグニッション・スイッチを入れてみると…。なんと、ハイテンションコードからすぐ下のヒーター用ホースのジョイント部分に向けて火花が飛んでいるではないか!!要するに、雨でエンジンが濡れると、ここで漏電していたわけである…。
 
このときは、たまたま持っていたスプレー式のシール剤を吹き付けて漏電を止め、なんとか再スタートして家まで帰ったが、その後もたびたび同様のトラブルが発生した。そこで、デスビやプラグコード、イグニッションコイル等の電圧のチェックを行ったところ、デスビのキャップ内のポイントの導通や、プラグコードの導通が非常に悪く、場合によっては全く電流が流れていないことが分かった。3番4番ピストンなど、ここ数ヶ月もしかしたら火花が飛んでいなかったかもしれない!!
 この状況を解決すべく、ショップからシリコン・プラグコードを購入し、もともと付いていたハイテンションコードやプラグコードを取り外して交換した。真っ赤なシリコンコードは見た目はちょっと良くないかもしれないが、電気抵抗は限りなく0に近い。これで電気が流れるのは間違いない。ついでにデスビキャップ内も掃除して…と思ったら、センターカーボンがばねの力で飛び出てしまい、焦った。なんとか元通りに押し込んだ。
 さて、元通りに部品を組み付け、エンジンを始動してみると…。いままでのエンジン音は何だったのだろう?と思われるほどまったく生き返ったようなエンジン音である。その後100キロぐらい慣らしで走ってみたが、加速性能などはずいぶん改善された印象だった。
 それからしばらくたつが、エンジン関係のトラブルは皆無になった。また、OHしたエンジンもだいぶ当たりがついてきたのか、回転も安定し、扱いやすくなった。
その後、1月に一度バッテリーを上げてしまうのだが、それ以外はまったくノントラブルである。さすがだ、S800。