アナログ盤奥の細道「復活編」
2010年11月「UKシングルの”スリーブ”分析」の巻
2000年にビートルズのUKシングルを集め始めてはや10年。
今月、避けて通っていた「Eleanor Rigby/Yellow Submarine」をやっと入手し、合計22枚のUKシングル道をとりあえずコンプリートすることができた。
それを記念し(?)、UKシングルのスリーブを分析してみたいと思う。
というのも、この手のスリーブは元々ほかのレコと入れ替わったりしてしまい、オリジナルのものが付いていることのほうが少なく、
かといって「別に何でもいいや」と捨て置くのももったいない魅力を持っているからである。
タイプA:ダイヤモンド・スリーブ
(1961〜63年初期頃)
「Love Me Do」や「Please Please Me」に使われていたもの。
基本的には青・赤・黄の三色刷りなのだが、それをうまく重ねて緑や紫を演出してカラフルに仕上げているのが秀逸だ。
特に黄色は退色しやすいので保管に注意が必要である。
裏面には、当時パーロフォンから発売されていたLPの広告が載っていて、すでにこの時点で「スリーブ=広告」という概念が通用していたことを示している。
ちなみに、乗っているLPで一番新しいのはテンペランス・セブンのPMC1152だが、発売は1961年のアルバムである。1962年秋に発売のシングルにつけるのはいささか時期が遅すぎる気がするが・・・。少なくともこのアルバムからビートルズの「Please
Please Me」アルバムまでにはあと20枚のLPが発売されているのだ。
タイプB:ビーチカラー・スリーブ
(1962〜63)
これは上の「ダイヤモンド」と比べて裏表とも模様のシンプルなデザインである。
しかし、これも赤青黄色の三原色を上手く重ねて、かなりサイケなイメージを演出している。
時期的にはタイプAと重なって使用されているが、コチラのほうが後から作られたと思う。
”THIS RECORDS MUST BE PLAYED AT 45 R.P.M”などの文字がダイヤモンドの小文字ではなく大文字で印字されており、これはその後のスリーブと共通だからである。
これも赤や黄色が退色しやすく、きれいな状態のものを見つけるとうれしくなるスリーブである。これに赤レーベルのシングルが入っているのが一般的だが、店などではこれに黒パーロフォンのレコが入っていたり、その逆にタイプC以降のスリーブに赤パーロフォンが入って売られていたりもする。
色合いのよさからいえば、やはりこのタイプBまでは「赤パーロフォン」に入っていて欲しいものだ(笑)。
タイプC:グリーン・スリーブ(笑)
(63〜64)
名前の付けようがないので、「緑のスリーブ」といおうとしたら、イギリスの民謡「グリーン・スリーブス」になってしまった。これも何かの運命を感じる。
タイプA・Bと比べると、きわめて現代的かつ没個性的スリーブである。
いくつかのタイプが混在する。
※上の取り出し口の「切り方」だけでも数種類ある。
これは上の切り口が比較的「直線的」な固体である。もっと波打って切られたものも存在するが、たぶんコチラのほうが早い時期のものだろう。
持ち主がレコの題名を書いておいてくれたおかげで、これが1963年のものとかなりの確率でいえるのがうれしい。
裏面左上には
「プレゼントにEMIのレコード・トークンを!!」
と宣伝。今で言う「レコード券」だろう。ここの額面は6’-to50’となっている。これが後期になると大きくなっていく。
右上にはおなじみ「EMITEX」レコードクリーナーの広告。まだ「NEW EMITEX」では無いのがミソ。NEWはアルバムでは「FOR SALE」からであるので、この広告が有効だったのは1964年内だと分かる。
タイプD:グリーン・スリーブ
(63〜64)
タイプCと比べて上の取り出し口の波型が大きい。
それ以外の表示などは裏表ともほぼ同じである。
右下の「レコードメイル」というのはレコード屋で申し込み、一ヶ月に1ペニー払うと届けられるもので、「最新音楽情報紙」的なものだった。テレビもラジオも、まだ音楽の流行にリアルタイムではなかった時代に、このようなものを購読している人も多かったことだろう。
ちょっとほほえましい広告である。
タイプE:グリーン・スリーブ
(64〜66)
タイプCやDと比べて上の取り出し口の波型が大きい。
さらに波型が2つに増やされている。
表は、丸い「パーロフォン」マークに、EMIマークが追加されて、
おおきな四角い枠に納められるようになった。
EMIの戦略的な欲望を感じる部分である(笑)。
裏面では、「NEW EMITEX」の登場が上げられよう。
レコード・トークンが使える地域に、新たに「EIRE」=アイルランドも追加。政治的に対立している地域同士だから、なにか改善された証拠だろ。
そして、不思議なことに、裏面の活字が一回り小さく太いものに変えられ、
レイアウトも全体が小さくなり余白が大きくなったことも特徴的である。
それ以外の表示などはタイプC・Dとほぼ同じである。
このタイプで、レコード・トークンの額面が上がったものがタイプFである。
タイプF:グリーン・スリーブ
(19?〜1968)
これをみると、レコード・トークンの最低額が6から7’3に引き上げられたことが分かる。
シングルレコードの値上げか何かがその原因だと思う。
いつから引き上げられたのかは資料が見つからないが、きっと世界のどこかにあるはずだ。
それを見つけられれば、きっとこの値上げの時期も特定できると思う。
しかも、裏面に見える「折り返し」が、今までの左右ではなく「L字型」(下と右側面だけ)になっているのも、
これが後期に作られたものであることを示している。
活字はタイプEに比べてやや大きく縦長になり、その分、同じ文章なのに行数が増えるという現象が起きているが、
その内容はまったく同じといって良い。
私のレコの場合、このスリーブは「She Loves You」についてきたのだが、(1963年発売)ぜったいに中身と合っていないと思う(笑)。仮にオリジナルだとすれば、(確かにスタンパーが200番台なので)かなり長い期間同じシングルを作り続けていて、レコ自体も後期であるとも考えられるが、リマークがあので遅くとも1968年までのレコであることは間違いない。
タイプG:ドライヤー・スリーブ
(1965〜66?)
2トーン印刷された変り種である。
表側には黒字で印刷された「パーロフォン」の文字と、
下のほうに「レコード・トークン」の広告が。最低額が6なので、まだ引き上げ前の仕様だということが分かる。タイプEのあとを引き継いだのか?
それ以外は、タイプEの裏面の「題目」だけを表に小さく印刷してある。つまり、
@トークンを買え Aレコード・メールを読め Bエミテックスを使え
である。これより後の「広告スリーブ」と共通の内容である。
EMIの文字の下にわざわざ”TheGramophoneCompanyLtd"とかかれているので、きっと1965年にシングルのリムの文字が
「Parlophone」から「Gramophone」に
変わった時期と符合するのかもしれない。
裏面では漫画でストーリーが書かれている。
こんな感じだ・・・
@女の子が「TheFrantics」というバンドにファンレターを書いたら返事が来た。「土曜にクラブに来たら?彼らに会わせてあげるよ。」
A鏡の前で女の子A「ああ、髪の毛を整える時間が無いわ」B「だからドライヤーを買えって言ったでしょ?ぼさぼさ頭さん」(酷い・・・)
Bバンドが歌う「Ah・・・Go・・・Fo・・・You」
C観客席で女子A「やっぱあたし買うわ・・・つまり、マーフィーリチャーズのドライヤーを」B「それはいいわね。」
D楽屋口で女子B「さあ、ここで弱気になっちゃ駄目よ。私たちがファンクラブを運営しているくらいのつもりで行かなきゃ!」
Eメンバーが仲間に女子を紹介「これが手紙をくれたファンだよ」メンバー「僕のファンはいないの?」「僕がフランのファンさ」云々。
・・・なんやねん!!!
タイプH:メイクアップ・スリーブ
(1967?)
タイプGの兄弟スリーブである。
今回は緑一色の印刷。
表面もタイプGと共通のレイアウトだが、活字が細くなったことと、レコード・トークンの金額が7’3に値上がりしている点が違う。
このスリーブの右上に、5602の書き込みがある。
当時はレコード店が、中身を見分けるためにレコ番号をここに書き込む習慣があった。もしこれが合っているとすると、このスリーブは本来Holliesの、
Carrie Anne / Signs That Will Never Change
(Parlophpne R 5602)・・・ 1967年5月発売
が入っていたことになる。
貼り方も「L字貼り」で、このころからこの作り方がスタートしたのではないだろうか。
裏面は化粧品の広告であるが、ポップで色気のあるデザインである。
タイプI:アド・スリーブ(参照)
(1967〜)
実はこのスリーブだけはまだ手元に無いのであるが、これもいずれこれも手に入れたいものである。カラーの珍しいスリーブだ。
広告の中に、ビートルズの「オールディーズ」が掲載されている。
ということはこれが1966年後期以降のものであることが分かる。
左においてあるのは、ファンクラブの入会説明書である。
このように、当時はシングルレコに一緒に封入されて売られていたらしい。
こんなにきれいな状態でいまもっていたら間違いなくお宝である。
裏側を見るとこ時期特有の「L字貼り」されていることがわかる。
レコードトークンの額面が5’〜30’に訂正されているのが面白い。
レコードの値下げでも行われたのだろうか。税率の変更か。
理由が知りたいところである。
さらに、ソフトがレコードだけではなくなったこともこの時期の特徴である。
「Disc And Tape Records」とあるので、この時期から「ミュージックテープ」も併売され始めたことが分かるのである。
レディーマドンナやエリナーリグビーのシングルと組み合わされて売られていることが多いので、ぜひ見つけて手に入れたいスリーブである。
タイプJ:スクロール・スリーブ
(1968〜1968)
こいつの特徴は何といっても表面の「渦巻き」模様と、裏面の広告である。
表の「EMI」ボックスは左隅にこじんまりと引っ込み、逆に上の「パーロフォン」のPの字がやたらと強調されている。
時期的に、パーロフォン担当のディレクター、ジョージ・マーティンの独立とも重なってくるので、パーロフォンレーベルの力がEMI内でも絶対的になったことを示している・・・わけないか。
裏面にはEMI最新アルバムの広告が。1968年の作品だろう。
右上にディープ・パープルのレコも載っているが、当時のメンバーは
ジョン・ロード(キーボード)
リッチー・ブラックモア(ギター)
イアン・ペイス(ドラムス)
ニック・シンパー(ベース)
ロッド・エヴァンス(ヴォーカル)
ちなみに、このスリーブも、タイプFやIと同じく「L字型」に貼り付けられている。
タイプK:アップル・スリーブ
(1968〜)
1968年にビートルズが立ち上げたアップル。
これとともに、レコードはパーロフォンではなくアップル・レーベルになり、
同時にスリーブも「アップル」スリーブに変わる。
このつや有り黒のスリーブは、「Hey Jude」についてきたものだが、
よく見ると表面の右下に「PRINTED IN USA」と丸いデザインが。なぜかスリーブがアメリカ製。
これもなにかの事情があってのことだろうから、あとで調べてみたいと思う。
袋構造の作り方は、「L字貼り」ではなくなぜか以前の「左右貼り」に戻っている。
同じつや有りスリーブでも、上の波型が1つの物と2つのものがある。
右の写真は、同じくつや有りの2つ波である。
USAの表示は無くこれも左右貼りタイプ。
さらに、L字貼りのつやなしタイプも存在する。
下のものが1969年「Something」についてきたアップルスリーブであるが、
上の切り口が台形の形状に加工されている。
貼り方も右と下のL字型。
Appleというロゴも。色が若干緑っぽいのが分かる。
これも時期によって違うのかもしれない。
調べると奥が深くてやめられない世界である。
しかし、なんだかんだ言っても、
やはりスリーブで一番いいのは、
この2点だということに変わりは無い・・・。