PCS3058「A Hard Day's Night(Stereo)」の巻
 

"A Hard Day's Night"

Release:August 10th,1964

Matrix No.:YEX126-1/YEX127-1
Stamper/Mother No.:RM(24)/3, GL(18)/2
Weight :165g
Tax Code:KT
Jacket: Garrod&Lofthouse Ltd

「Hard Day's Night」からは、stereo表示が横38ミリ×縦5ミリの「middle stereo」になっている。

 同名映画のサントラ版として発売されたアルバムのステレオである。
 アメリカでは、映画配給会社のUAがレコードの版権をも手にし、「これで一山当ててやろう」的発想においてイギリス版とは違う曲順(しかも、半分はジョージ・マーティンのオケによる
BGM)で発売されていた。アメリカでもし、このUK盤と同じ曲を聴こうとすると、
キャピトル発売の「セカンド・アルバム」「サムシング・ニュー」そして「ビートルズ’65」の3枚を買う必要があったのである。(しかも、「ハードデイズナイト」は1970年の「赤盤」、「恋する二人」と「キャントバイミーラブ」はLP「ヘイ・ジュード」の発売まで待つ必要があった!)まさに、
アメリカ音楽業界の「切り売り作戦」の象徴のようなアルバムである。

 このアルバムの録音時からいよいよ4トラックレコーダーの導入となり、各楽器の録音時の分離が良くなったため、ステレオ盤としての価値はこのアルバムから本格化したといっても過言ではないだろう。先の2枚のアルバムのステレオは、基本的に
「ボーカルのボリュームと演奏のボリュームを最適に調整するための方便」として使われた手法の産物だったからである。

 ボーカルをセンターに配置し、左にドラム・ベースなどベーシックトラック、右にリードギターなどのオーバーダビング系を配置してあるので、とても聴きやすい音像になっている。
 この時期はジョンのある意味「第1次絶頂期」であり、すばらしいオリジナル曲のオンパレードを繰り広げている。
 しかし、このアルバムをより際立たせているのはジョンのそれだけではなく、アレンジの妙や、各メンバーの技術的向上とアイデアのおかげである。

 まず、リンゴの貢献をあげてみよう。
 すべての曲で、見事なビートを叩いているが、特筆すべきは「Tell Me Why」のドラミングであろう。イントロの
「タスタタ」というスネア/タムのコンビネーションや、間奏終わりの「6連×2」など、実際に演奏してみるとすごく難しいプレーを軽々とこなしている。ドラム以外のボンゴなどの演奏、オーバーダビングされたフロアタムなど、リンゴのおかげで「良い曲」レベルから「名曲」レベルに引き上げられた曲が多いと思う。

 次にジョージの12弦ギター。多くの曲で使用されているが、改めて聴いてみるとそれほど「どうだ!まいったか~」とまで弾いているわけではない。というか、逆にコードカッティングに使用されている場合の方が効果的だったりする。※「ハードデイズナイト」のイントロ/間奏も、今では12弦ギターでは再現できないことが分かっており、余計にそれ以外の使用のほうが重要視されているのだ。さらに、このアルバムで重要なのは
「ガット・ギター」である。ジョージの弾くホセ・ラミレスは「And I Love Her」と「I'll Be Back」で聴けるが、この音色は12弦ギターと同等に重要だと思う。

 ポールのベースは意外やあまり目立たないのだが、逆に無駄なことをせず、効果的な動きを作り出したといっても良いだろう。「素敵なダンス」ではリード・ベース的動きも見せているし、
「やればできるんだけど、あえてやらないよ~」という遊び心さえ感じさせる。

 そして全編をびしっとしめているのがジョンの弾くジョージから借りた(笑)「J160e」のカッティングである。もう全曲といっていいくらい多用されているが、どれだけジョンがこの楽器の音を気に入っていたかが分かる。ライブでは1964年製も弾いていたが、きっと一番好きだったのはこの時期の62年製の方の音だっただろう。
 
 しかし、例よってステレオ盤のミキシングはあらが目立つ。一曲平均15分で仕上げたそうで、例の「恋に落ちたら」のポールの「息切れ」もモノ盤ではちゃんと修正されているのに、ステレオ盤ではそのまま製品化。しかし、アレを聴いたときに「ああ、ポール様も人間なんだな~」と感動した人は多かったに違いない。
※実際、あのG音は歌ってみるとかなりきつい。高さではなく、「vain」という言葉のせいだろう。「アー」とか「ウー」ならいいのに「エイン~」と歌うのが・・・。
私もその一人。初めてCD化された当時、息切れバージョンが聴けなくなり地団太踏んで悔しがったのは私だけではないであろう(笑)。


レーベルの変遷については、以下のようである。

タイプ1A 
丸い活字(Gill Sans・・・サン‐セリフ体の一種か)で印字されたもの。
    1B 活字が通常の縦長サン‐セリフ字体が使われたもの。(この写真と同じタイプ)
※これはかなりプレス初期の内に変更が行われたらしく、時期的に混在しています。
    1C 1Bと同じだが、
タイトルを横幅を広げて印字されているもの
    1D 1Cと同じだが、
曲名を間隔を広く取って印刷したもの。
タイプ2・・・Recording Eirst Published 1964 が「Ⓟ1964」に変わったもの。
1965年になると、リムの文字が「Parlophone」から「Gramophone」に変わる。

オリジナル1964年盤を求めるならば、
タイプ1の中を見つければ確実である。


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