2005年6月その2 「グレイト・ファット・フィンガー!!」 編
左の写真は、我が愛器リッケンバッカー4001Sのヘッドである。
しかし、よくみると、何かおかしな物が挟まっていることに諸兄も気付くであろう。
これが、今回の話題である「Groove Tube製Fat Finger」君である。
この4001、実はデッド・ポイントが存在する。
※デッド・ポイントというのは、ある特定の周波数の音に対して、ギターのボディーなどが共振し、音を打ち消してしまい、極端にサスティンなどが悪化する症状である。以下は、今回この商品を入手するに当たり相談した方のコメントである。
「ベースのデッドポイントにつきましては、いろいろと説があります。ひとつには「ある一定周波数の音に対して、ボディもしくはネック、ヘッドから出る”逆位相振動”がサスティーンの量を打ち消しているという説です。これは変形しているボディの形やヘッド、ネックなどに関係していて、ボディなどに共振した音波はボディの形状によっては乱反響を発生させ原音に対して位相が逆の振動を生み、本来伸びるはずのある一定周波数にだけぶつかり、打ち消しあってしまうという事です。」
ポール・マッカートニーが自分の4001Sに「0フレット」を打ち込んであるのを知っている方も多いだろう。昔から「なぜ?わざわざ?」と思っていたのだが、実はあれもデッド・ポイントをずらそうと試みた結果であると、以前東京の有名なW○○hという楽器店で教えていただいたことがある。
ということで、本題に入ろう。
この「ファットフィンガー」君は簡単に言えば「錘(おもり)」である。
裏がねじ式になっており、ヘッドの好きな部分にはさんでとめることが出来る。塗装にあたる部分はフェルトとシリコンで保護されているので、塗装をいためることもあるまい。
この錘によって、ヘッドやネック自体の振動の特性が変化し、今まで共振していた音をずらすことが出来るのではないかと考えたのだ。もちろんこの器具の本来の目的は「サスティーンの向上と、低音域の充実」なので、そんな効果も出たらいいなあ、と期待しつつ。あのビリー・シーンも使っているらしいし…。
結果は…見事にデッドポイントがずれました!!
つける前は、2弦の7フレット(A音)が死んでましたが、
@ヘッド先端につけると、A音はかなり生きるが、その下のG音が死ぬ。
Aネックよりに付けると、A音への効果が薄い。
などと実験しながら、今のところのベストな位置が写真の位置である。
ここにつけると、G音もA音もそれなりに生きる。ただし、G♯がややデッドになる。まあ、G♯などはベースでは経過音として使われることが多いだろうから、和音的にAを生かしたい曲やサスティン重視の曲ではこれが威力を発揮するであろう。
見た目上は始めは違和感があるだろうが、慣れればそれほどのこともないし、なんとなく「音にこだわる男」って感じがしてちょっとかっこいいかも、と思ってしまう。
2007年1月 「リッケン再生への道」 の巻
新年から飛ばしていこうと思う。今年もなにとぞお付き合い願いたいものだ。
この写真は、今回アメリカはテネシー州メンフィスから入手した、リッケンバッカー社のスチールギターに装着されていたホースシュー・ピックアップである。ジャンクとして売りに出されていたものを入手。これで何をするかと言うと…。
そう、あの磁力を失ったリッケン4001君のホースシューと交換しようというのが今回の狙いなのだ。
実は先月、ある楽器店に行った時に、それとなく店主に聞いてみたのだ。
おいら「リッケンのベースのホースシューのマグネットと、スチールギターのホースシューを取り替えることってできるんですかねえ」
店の人「いや、サイズとかが違ったと思うんで、ダメだと思うけどなあ。」
ダメと言われても、やっちゃうんだよねえ、私。メール等でサイズを確認すると、マグネットの幅や長さはほぼ一致。戦後のモデルだろう。これなら何とかいけるかもしれない。決意して輸入した。
届いたのがこれ。8弦スチール用なので、ボビンにはポールピースが8本立っている。マグネットのクロームもまだ輝きを保っているし、どう見ても私の4001のよりきれいだ。何とかこれを付けられないものか、と思い、バラバラに分解して、取り付けねじ部のサイズ等を見ると…全くおなじじゃん!!これならボルト・オンっす。早速、4001側のピックアップも分解にかかる。
こいつが元のホースシュー君。見よ、このやれ具合を。マグネットのメッキは剥げ、赤錆すら浮く。仕方なくその上をマニキュアで覆い、さらに貼り付け透明ピックガードで覆っていたのだ。磁力は失われているので、小型強力磁石をこの裏に貼り付けて、何とか音を出しているのだ。
どのくらい磁力が弱いかと言うと、これを見て欲しい。左が4001用。ねじも張り付かない。しかし右側のスチールギター用は、まだまだねじぐらいは張り付く磁力を持っているのだ。
次は、この2つを上手く合体させねばならない。とりあえずねじ穴の位置等は全く同じと言うことは判明したので、アルミ製のベースプレートとマグネットは入手したきれいなほうを使用し、そこに4001用のボビンを取り付けることにした。
このボビンも曲(くせ)者である。素材が軟質なもので、ぐにゃぐにゃする。コイルの巻きも若干緩んでいる。が、巻きなおす時間も無いので、そっと黒テープだけ巻きなおし、そのまま新しいベースプレートに固定。固定は、ねじ2本で簡単に止まっているだけなのだ。そこにさらにマグネット固定用のねじが2本。合計4本のねじで全てが一体となるのだ。
さて、アース線と出力線を元通りに接続し、アンプにつなげてみると…???あれ、指で触るとノイズが増すなあ…。ありえない現象だ。普通は、人間がアース代わりとなるので、指で触るとノイズが減るはず。これはきっと配線ミスに違いない。あるいは、マグネットの方向を勘違いして逆に取り付けたのが原因か??仕方ないので、アース線と出力線を逆に接続すると、あれ不思議、ノイズが出なくなったのだ。理由が理解できないが、まあ、音が出ればよしとしよう。と言うことで、元通りに組みつけていく。おかしいなあ、元通りにつないだはずなのに…。誰か理由を教えて欲しい。
さて、ピックアップを外したついでに、このキャビティーをチェックしておこう。ここにはピックアップマウントが付いていたため、日に焼けずに残った塗装を確認できるのだ。この画像から見えるだろうか?穴の右手が、焼けていないピンク色と、日に焼けた黄色に分かれているところが。ルーティングもピックアップの大きさギリギリに切っているところが憎い。さすが、アメリカのクラフツマンシップ…とかおだてておこう。
こうして、無事にマグネットとベースプレートを移植された4001君。アンプを通して音出しをしてみたが、強力磁石の助け無しでもかなり大きな出力が得られるようになった。ローカットコンデンサーがかましてあるので、フロント・ピックアップよりも若干出力が落ちるのだが、それにしても昨日までに比べれば雲泥の差である。さらに、さびさびだった見た目もぴかぴかに生まれ変わり、まさに一石二鳥のリペアとなったのである。
取り外したマグネットは、出来れば再メッキに出したいと考えている。素材が「タングステン・スチール」だとか、コバルトが入っているとか、色んな説があり、上手くメッキが乗るかどうかわからないが、是非チャレンジしたいところだ。そしてそれをさらに再磁化(強い磁力を当てて鉄を磁石に変えることが出来るのだそうだ。)できれば、将来に向けてのストックを持つことが出来るのだから。めっきについては車の部品で世話になったところを知っているので相談出来るが、再磁化については全く情報が無い。これからのんびり調べていこうと考えている。
今年の宿題ができたな(笑)。
2007年5月 「4001ミュート再生&謎」 の巻
リッケンバッカー4001君のミュート機構を再生しようと考えた。
グレッチもそうだが、当時のギターに採用されていたミュート機構は、ほとんどがスポンジ素材の劣化により、その機能を失っていることが多い。(使う人なんているのか?とは思うが) ご他聞にもれず私の4001のミュートも、スポンジ部分がタール状に塊となり、まったく意味を成さないだけでなく、かたかた揺れ動く厄介なお荷物と化していたのである。
そこで、とりあえず見た目も改善されるように新しいスポンジを両面テープでくっつけておくことにした。あるいは、もしうまく機能すればあの「サージェント・ペパーズ」でポール・マッカートニーが使った「ミュート奏法」を再現できるかも知れないのである!!
とりあえず、ブリッジをはずし、テールピースをとめている3本のねじ(これもそろそろ限界に近そう…)を緩めて取り外し、ミュート機構の様子を観察する。これがその写真である。
ベースプレート(ここにアース線が引かれている)には、ピックアップマウントなどと共通のあの黒く丸いゴムブッシュを介して2つの小さなプレートが山形になるようにとめられている。その上に、劣化したスポンジがべたっと張り付いているのだ。とりあえずその残骸を撤去した。
今見ればなんとも原始的な構造であるが、すべての部品を自社工場内でまかなおうとするリッケン社の思想が見て取れる部品ではある(笑)
さて、このプレートは2本の高さ調節ねじ(ストラップピンと共用!!)で吊られているのだが、そのねじの先が抜けないようにはんだ付けされており、ミュートプレートを外すためにはそのはんだを溶かさなければならないのだ。せっかく1960年代から生き残ったはんだをとるのはもったいない。そこで、取り外すことを断念し、テールピース上の隙間からスポンジを入れて貼り付けるようにやってみた。
隙間テープに使われるようなスポンジを1センチほどの幅に切り、裏側に両面テープを貼り、プレートの上に滑り込ませる。その後、上から力をかけて圧着・・・しようと思ったが、小さいほうのプレート取り付けねじが邪魔してうまくくっつかない。ま、半固定的にはなったので良しとしておこう。
外しついでに、ピックガードも取り外して写真を撮っておこう。何かの役には立つかもしれない。
このように、フロントはピックガード上に取り付けられている。
ルーティングはかなりいい加減。ドリルでつないだリード線用の溝が生々しい。ピックアップキャビティーも、フリーハンドでやったらしく、きれいな四角にはなっていないようだ。ピックガード下になっていた部分はまだきれいな色を残しているので、オリジナルの色具合を調べるのには貴重な資料だろう。
コントロールポットの取り付け部分に貼られた紙テープ(保護用?)はオリジナルの証拠とも言われている。青い独特のトーンコンデンサーも60年代リッケンの定番である。このベースはすでにローカット・コンデンサーは除去しているので、その部分だけ白いリード線になっているが、ほかは布巻のオリジナルのリード線が残されている。
さて、謎というのは、このコントロール・ポットである。CTS製のフェンダーなどによく使われている「テーパー型」なのであるが、製造週を示すコードが「6450」なのである。64は1964年でいいのだが、50週目??一年がほぼ52〜3週であることを考えると、12月ごろになるのではないか?
このベースのシリアルはDKつまり、64年の11月なのだ。
このような矛盾が生じたのには何か理由がありそうであるが、確かめるすべは今のところない。
シリアルプレート偽造説?ポット交換説?いろいろ考えられるが、これはそっとしておこう。
女性のうそと同じで、「あまりしつこく追求すると大きなしっぺ返しが来るかもしれない」からね。(笑)
2008年12月 「リッケンベースのテールピース」 の巻
オールドリッケンのブリッジは、ねじ3本だけでとめられているのである。
Vシリーズの時には、さらに2本、後ろにねじが増設されて、いわゆる「ブリッジリフト」(※テールピースが弦の張力に引っ張られて浮き上がってしまうこと)を押さえ込んでいたが、逆に言えば、テールピースの「強度稼ぎ」の意味合いもあるのである。
特に70年代のリッケンベースのブリッジは評判が悪く、酷いものは途中から真っ二つに折れて浮き上がるようなものも時折目にするほどである。が、60年代のものはキャスティングが良かったのか、それとも素材の違いか、そのような酷いリフトは起こりにくいようである。
逆に、3本しかないねじはメイプルのボディーに直付けされているが、その木の「ねじ山」が痛んでしまう傾向にあるのだ。私の4001君も、3本のうち2本のねじ山は限界に近い。そのうちにメイプル材を打ちこんで修理をする必要があるのだが、いかんせん、お金も無いし、毎週使っていると修理に出す時間もなかなか取れないのである。
そこで、いつもはねじ穴に「ゼリー状瞬間接着剤」などを流し込んでごまかしているのだが、この前ふと別の木部ねじ山強化剤を発見。その名も「TITEN」(タイテン)。ねじ山をタイトにしてくれるのであろう。
とりあえず、ブリッジをどかし、ねじを外してテールピースを除去。ねじ穴をちょっときれいにしてから、その半透明ゼリー状の「タイテン」を注入。15分ほど放置してから、元のようにねじを使ってテールピースを取り付けた。1時間で乾燥、24時間で最大強度を発揮するようなので、弦は張らずに明日まで放置することにする。これでしっかりねじが締まるようになれば、音のほうにも何らかのよい影響が出そうなものだが。期待して待つことにしよう。
いよいよ2008年も残り2週間。楽器も最近ぞんざいに扱っていたので、2009年はさらにビートルズ楽器道ををきわめて行きたいと思うoyoyoであった。
2009年1月 「4001C64とRM1999比べっこ」 の巻
正月早々、ギターの話題で申し訳ない(笑)。
大晦日から元日にかけて、実はリッケンのベース話で盛り上がっちゃったのである。せっかくなので、内容をここに記しておこうと思う。なお、資料提供は私と、アメリカ在住Wes様によるもの。
さて、まずは一つ目の話題から。
1 「ベベル」(Bevel)の有無。
英語の辞書等でベベルと調べると、「厚板ガラスなどのふちを削った斜面」などという説明があるだろうし、「ベベルギアー」といえば、回転を直角に伝えるための台形のギアだということはお分かりの方が多いだろう。実は、60年代のリッケンバッカーのボディにはこの「ベベル」加工が施されているのである。もちろん、ジョンやポールのリッケンも。
左の写真は、マッカートニー様が使われていた4001の削られ前の画像である。
ホーン(角)の角に注目して欲しい。
ふちに沿って妙なライン(線)が見えることにお気づきだろう。これは、その「ベベル」加工が施されたことによる反射である。
これを、私の1999を使用してカラーで表現すると,
こんな感じである。
もうすこし拡大してみてみよう。これが、ホーン部分のベベルである。
エッジの部分が平面的に面取りされているのがお分かりだろうか。ちょうどその部分が表面のファイヤーグローの塗装面と、サイドのイエロー塗装の境目になり、光が当たるとこのように層になったような光の反射をするのである。
このベベル加工は、ホーンの先端からボディーに向かって入っているが、ボディーの手前でだんだん薄く細くなり、ボディーあわせの部分ではほとんど無くなっている。これは当時一本一本、形状を整える際に、職人の感覚で手作業していた加工だそうだ。
現在、CNCルーターで制御されたボディー加工の中では、ここまで再現するのは非常に手間がかかるであろうし、第一ここまでの再現を求める顧客も多くは無いであろうから、Cシリーズの再生産でも無視されてしまった点である。
今後、再現される日が来ることを待つほか無いであろう。
2 ボディ形状
リッケンバッカーの工場内にあるCNCルーターには、60年代の4001のボディーシェイプのデータが入力され、それにしたがってルーターがメイプルの木材をカットしていくのである。同時に同じ形状の木材が何個もカットできるのであるから、人間が手で行うよりもばらつきが少なく、加工も正確に出来る。ネックセット部などは隙間もなくぴったりあわせることも出来るのだ。昔の「ちょっとずつ削りながら」という楽器作りはもう難しいのである。
しかし、そのばらつきを押さえようとすると、元のボディーシェイプよりも角がとれて「ダル」な形になってしまうことも多い。あまり角が立った形状よりは作業もしやすいであろう。
画像が小さくて申し訳ないが、左がC64、右が1999(64年製)である。
ほぼ同じ形に仕上がっている。が、直接2本を並べるなり、写真で見たポールの4001sをイメージしながらC64を見ると…何かが違うことに気付く人は多いはずである。
今回、Wes氏がほぼ同じ距離から撮影した2本の写真データを照合し、われわれが手、あるいは目の感覚で感じている「違い」がどこにあるのか、探ってくれた。※これはあくまでも一つの意見であり、皆さんの参考になればということで公開することにした。C64も個体差があるので、絶対これに当てはまるというわけではない。
右の図を見て欲しい。
色の薄い方が、私の1999からトレースしたボディ形。
濃い色の方が、Wes氏のC64である。
どうだろう?私が見て一番違和感を持った2点が、はっきりと現れているのが、ある意味納得だ。
@C64は上の角が太い。
1999の方が、内側のえぐり方が深く、それが全体を細く見させていることが理解できる。また、角の上部、ストラップピンがつくあたりの形状も、C64の方が丸みがあり、1999は上に突き出すような形である。※後述する「コンター」の入れ方によっても細く見えるか太く見えるかが大きく左右されるが。
AC64はボディー全体がスリムで無い。
私が初めて1999を手にしたとき、真っ先に感じたのは「ボディーがスリムだなあ」という感想だった。
当時の私はVシリーズと比較していたのだが、C64になってもその印象は抜けなかった。これを見ると、Cのボディーは1999よりも幅が取ってあり、逆に1999はおしり部分がCよりも長く、そこがボディーを「細く」見せている原因になっているのではないか、ということだ。
Bコンター加工の違い
ボディーにひじなどがあたる部分を削って面取りすることを「コンター加工」と呼ぶが、4001ベースにも各所にこのコンター加工が施されている。
特に見た目に影響するのはやはり上側の角(ホーン)部分になされた加工であろう。
ちょっと光の当たる角度を変えて写した1999である。
黄色い矢印の部分辺りからかなり深いコンターが入る。
光に当てるとこのようにはっきりとした角度で削り取られているのが分かるだろう。
C64のクリアーな画像が無いのが残念だが、手元の画像で見る限り、ここまでくっきりしたコンターは入れられていないようだ。
同じく、そのコンターはボディ側面(青色矢印)部分までしっかりと続いており、ここがオールドとCシリーズの重量を大きく変えてしまっているのでは無いかとさえ思えてくる。
もし、現在のCシリーズにこれだけくっきりしたコンター加工を施すとすれば、先ほどの「ベベル」加工同様、作業に相当熟練した職人を複数抱えない限り、すべての楽器に均一な加工を施すのは不可能であろう。
が、逆に言えば、しっかりした腕を持ったリペアマンに依頼すれば、C64を究極の一本に仕上げることも可能であろう、ということだ。ファイーヤーグローのC64を買い、その塗装をやり直しながら、コンター加工やベベル加工にこだわって仕上げてみれば、きっとこの世に一本しかない「究極のC64」を手にすることが出きるのだ。
3 重量
これは仕方の無いことだが、昔の木材は長期乾燥され、重量も軽かったのであろう。
’64の1999は約3.9キロ。軽くは無いが、我慢できる重さだ。私のVシリーズは軽く4キロを超えていた。一回のライブで肩が凝る位であった。現在のC64の重量の正確な資料が無いのだが、人間にはたとえ200グラムでもその違いがあれば感じ取る感覚が…その違いを余計に大きく感じてしまうのだろう。
何度もいうが、4001は個体差があり、すべてのCシリーズにこれらが当てはまるわけではないです。あくまで参考のための資料です。怒らないでね、新○堂様。
2011年12月その2「Rickenbacker4001sピックアップカバー交換(笑)」 編
2010年2月 「ポールのリッケンバッカー・セッティングは?」 編
1965年からポール・マッカートニーがスタジオで使いはじめたリッケンバッカー4001S。
その後、各数の名曲に使用され、それらの曲とともに、ヘフナーとはまた違ったベースの音色をわれわれの記憶に刻み込んだのであった。
がしかし、実際、ポールマッカートニーはあの扱いにくいベースをどのようにセッティングして音作りをしていたのであろうか?このような問いにはなかなか答えが出ていないのが現実である。
そこで、画像として残されているものから、ポールマッカートニーの当時の音作りを推理しようと思う。
今回は、左にある「リボルバー」録音当時のリッケンバッカー画像から、彼の音つくりの工夫を読み解こうと思う。
彼のリッケンバッカーは1964年1月、アメリカに初めて渡ったビートルズにプレゼントすべく(もちろん、大きな見返りとしての宣伝効果を含めて)FCホール氏らリッケンバッカー社の人々が送り込んだ刺客である。
ジョンは古くなってどうにもならなくなった325を注文し、ジョージは12弦の360/12を受け取りご満悦。だがポールははじめこのベースの受け取りを拒否。どんな理由か知らないが、広告塔代わりに利用されるのが嫌だっただけかもしれない。後に結局は受け取ったのだから、音が気に入らないというような根本的な理由ではなっかのであろう。
話をセッティングに戻そう。この写真から読み取れる彼のベースの状態をまとめると、以下のとおりになる。
@ピックアップセレクターは下向き。
Aリアのピックアップのボリュームとトーンはフル10(と推測される)
Bフロントのピックアップの上側のポットはフル10・下側のポットは半戻し程度。
これを、右利き用の4001だと仮定して説明すると、こうなる。
@ピックアップはリアだけを選択。
Aリアのピックアップのボリューム(下側)とトーン(上側)はフル10。
Bフロントピックアップのボリューム(下側)は半戻し、トーン(上側)はフル10。
しかし、ここで根本的な疑問が出てくる。
まず、リアのピックアップをセレクトしているのに、フロントのボリュームをいじっても、何の効果もないということである。この写真がたまたま…というのであれば偶然で片付けられるが、実はこれと同じようなセッティングで写っている写真はほかにも多数あるのだ。
そこで、わが師「スタンダード様」の所有なさっている70年の左利き用4001の例を当てはめて考えてみよう。
つまり・・・ポールの4001sは、右利き用の回路をそのまま左利き用の楽器に取り付けている、という説だ。
ネックすら左利き用のテンプレートがなく、右利き用をそのままさかさまに取り付けたくらいである。ボディーは裏表をさかさまにすれば簡単にできるが、ポット・スイッチの類は取り付け前にすでに配線されたアッセンブリーとして在庫されていたであろうことを考えると、可能性としてはかなり高い説である。
そうすると、先ほどの解読は実際にはこのように変わるのである。
@ピックアップセレクターはフロントだけを選択。
Aリアピックアップのボリューム(上側)とトーン(下側)はフル10。※さっきと上下が逆。
Bフロントピックアップのボリューム(上側)はフル10、トーン(下側)は半戻し程度。
これならば、画像と機能が矛盾のない形であることがわかる。
実際にリッケンバッカーで弾かれたと思われる曲を聴いてみると、音作りは以外にもやわらかめで太い音を狙っていることがわかる。
フロントのトーンを絞りながら、指弾きやピック弾きでアタックに変化をもたせる、このような感じでヘフナーからリッケンバッカーへの乗換えをうまく乗り切ったのではないだろうか。実際、ヘフナーでさえセレクターをフロントのみにして、「太くてベースらしい音がするから」と言い放った御大である。リッケンのリアピックアップだけではきっとトレブリー過ぎてお気に召さなかったのではないだろうか。
2011年2月「リッケンバッカー・トラスロッド交換」 編
ここ数年来、ずっと探していた「幻の」部品。
それが、この「リッケンバッカー・旧タイプトラスロッド」である。
オールド・リッケンを手に入れて以来、数回ロッドを抜いてはネック調整を試みてきたが、
マイルドスティール製のこのトラスロッドは、ねじ山を切ってあるナット部分の強度が落ちやすく、
実際にはいくらトラスロッドを締めても、ナットが下を向くばかりで全く効かない状態、といっても過言ではなかったのだ。これでは、近い将来楽器としての機能を失うことにもなりかねない。
かといって、もはやリッケン本社でも「旧タイプのトラスロッドは販売しておりません」状態だったため、
「もはやこれまで」と半ばあきらめていたのである。
それがとうとう、オークションで落札できたのである。
これを奇跡と呼ばずして何と呼ぶのだろうか!!!(大げさ)
今回手に入れた相手の方はなんと元リッケンバッカー社でビルダーとして働いていたD・F氏。
落札時には気づかなかったのだが、このように長文のインストラクションを書いていただいた紙に、直筆の署名が書かれていてわかったのである。
彼はアメリカでもリッケンバッカー・リペアの部門では「ドクター」と呼ばれる専門医扱いで(笑)、たいへん尊敬を集めている方である。
そんな方から直接ロッドを購入することになろうとは・・・感慨もひとしおであった。
さて、こうなったら是が非でもロッド交換を成功させなければなるまい!
まずは古いロッドをスロットから引き抜く。
ヘッドの塗装面に傷をつけないように、プラスチックの薄板をはさみながら、慎重に引っこ抜いていくのだが・・・最後は「エイヤッ!」と気合を入れて引っこ抜かねばならない。
ロッドが抜けると、このような四角い穴が見えてくる。
ここに、2つ折りになった鉄の棒が突っ込まれているのだ。
その2つ折りの片方にナットをつけ、もう片方をスペーサーで押さえ込むことにより、
上下の鉄棒の長さに差が生まれる・・・これがリッケン独自のトラスロッドを効かせる仕組みなのだ。
上のロッドが古い物。
下のロッドが新しいほうである。
明らかに、古いほうはねじ部分が短い。
この部分の強度が抜けてくると、ここから折れてしまい、ロッドが全く効かない状況に陥るのだ。
新しいほうはまだまだしっかり感がある。
これは効果が期待できる。
ロッドの反対側はこのように2つ折りになっている。
上の古いほうはもう赤錆が出始めている。
これでは、強度を期待するのも厳しいだろう。
新しいほうは、若干のくすみはあるものの、未使用なのでまだまだしゃきっとしている。
さて、この新しいロッドをさきほどのスロット穴に押し込んでいく。
本などを参考にすると、
「引っかかった場合は無理せずに・・・」見たいな事が書いてあるのだが、
割とすんなりはいってしまい、あっけないくらいである。
さて、2本のロッドを仕込み終えたら、
そこに「スペーサー」をかませて、ナットで締めていく 真鍮製のきれいなスペーサーが付属してきたのだが、
残念ながらロッドの入るスロットとの幅が適合せず(新しいほうは狭すぎた)。
仕方が無いので、もともとの「アルミ素材」のスペーサーを再利用する。
ネックを若干の「逆ゾリ」状態に押しながら、すこしずつナットを締めていく。
特に5フレット付近を頂点になるように力をかけながら、
とりあえずナットを締め終えた。
さて、ネックの状態を目視してみる。
低音弦側はうれしいくらいにストレートであるが、
高音弦側はまだすこし順反りが残っている。
2本ロッドがあると、こういうときに調整が難しい。
とりあえず、低音側をほんの少し緩め、
高音側を少しだけまし締めする。
あまり無理をするとロッド自体を壊すこともあるし、
締めすぎると指板がはがれると聞いているので、
ほどほどのところで今回は手を打つことにした。
さて、12フレットで弦高をチェックしてみる。
もともとかなり弦高が高めだったのだが、このように2ミリ台にまで落とすことに成功。
この弦高ならば、まあまあ快適に弾けることだろう。
さて、取り外したついでに、
ネームプレートのはげかかった白い塗装をタッチアップすることにした。
単なる「ネームプレート」であるが、
破損などすると実際入手はたいへん困難であるため、
絶対に割らないような慎重な扱いが必要であろう。
さらに、オリジナルのプレートの特徴は、
「Ricken」の「n」字部分である。
右側の足が「流れて」いるのである。
(通称…流れエヌ)
とりあえず、ぱっと見はきれいになったので良しとしておこう。
さて、肝心のロッドの方は、とりあえず今の状態でチューニングを維持しながら一日放置し、ネックの様子に変化なければ、このトラスロッドカバーをはめて完成ということにしようと思う。