2013年8月「Hofner500/1 ネックリセット!」 編
いよいよ63年製500/1のネックがやばい感じである。
よく見ると、ネックヒール部分が浮きかかっているのが見えるだろう。
ヘフナーによくある、ネックジョイントのゆるみ現象である。
もともとここがニカワでつながれているうえ、構造もさほど頑丈にできていないので、時々は修正してやることが必要な部位なのであるが…。
この1ミリ程度のずれが、ブリッジ付近まで行くとかなり大きくなるのだ。
つまり…「弦高が高くなる」のである。
今回、12F(フレット)付近で弦高が6ミリにも達し、演奏上に影響を及ぼしかねない状態に陥ったのである。ブリッジも全下げ状態で、これ以上下げるなら台座を削るしかなくなってしまう。それは避けたい。
ということで、根本的な原因を直そうと思ったのである。
それには、まずネックアイロンでネックをまっすぐに修正し、
それで弦高を見たうえで、ネックのリセットが必要ならば、いったんネックを外し、再度接着しなおすというプロセスが必要となる。
今回も、またいつもお願いしている江戸の工房にお任せすることになった。
61年製のネック修理でもお世話になっているし、一昨年度はテネシアンとジェントルマンの調整でもお世話になった。
あそこならば古い楽器でも安心して任せられるであろう。
初めの見積もりでは1か月の入院を覚悟していたが、実際には2週程度で治ってしまった(笑)。
結局、ネックアイロンだけでは足りず、リセットも行うことにしたのだが。
まず、これがネックポケットの状態である。
※ネック横のバインディングのセルは、元々ひびが入って分離していたので、このように取れてしまったのだ。
ネックポケットには番号が書かれていて、同じ番号がネック側にも。
これは、塗装前にいったんボディーとネックをぴったりと合うように加工し、その後ネックとボディーを別々に塗装、再度組み立てるという工程があるため、いったん組み合わせたネックとボディー同士を識別する記号である。こいつにはB27という番号が振られていた。
ネックポケットの隙間を埋めてあるスプルース材が劣化し、割れていたのがネックずれの原因である。
画像で見る限り、明らかに劣化しているのがわかる。
材が割れて、はがれている。これで演奏していたのだから、いつ演奏不能に陥ってもおかしくなかったというわけである。
これを新しい材で補強し、再度ネックとぴったり結合できるように加工する。
この写真が加工後の写真である。
一度取れてしまったセルも再生して接着。
隙間を埋めるスプルース材をしっかりとはりつけ、それを削って微調整し、ネックヒール部分と密着させることが何よりも重要である。
ネックヒール側もしっかりと古い接着剤を取り除き、きれいにしてから。
これを結合し、接着し、数日放置。
接着剤が硬化してから、弦をはり、ネックが動かないかどうかをさらにチェック。
こうして最終段階が終わり、送り返されてくる運びとなったのが、約2週間後の8月4日というわけである。意外と早かったな。
さて、結果を見てみよう。
修理に出す前にあったネックヒール部の浮き上がりはない。当たり前だが。
バインディングもしっかりとくっつけ直してもらった。新しく作ってもよかったのだが、やはり古い部品の味を生かすためにはこの方がいいのだ。
さらに、ネックヒール部によく起こるあの「ヒール分離」現象に歯止めをかけるため、
※1961年型はそれで入院したのだ…
今の髪の毛ほどもない隙間に接着剤を流し込んでもらい、バフがけしてもらった。
これで分離を予防するというわけだ。
結果、弦高はどうなったかというと…。
おなじ12Fで測ってみて、(弦の下の隙間で)3.5ミリ!!
だいぶ弾きやすくなりましたです!
ブリッジ部ではさらに効果がはっきり見られます。
全下げ状態だったブリッジが、
今の段階で(ビビる一歩手前の弦高)、約3.5ミリ上がった状態にまで復活しました。
これで多少の弦高の変化には対応できます!
で、肝心の音はどうなったか?です。
結果。
@生音が大きくなりました。
→これはネックとボディーが密着したせいでしょう。
まだアンプにつないでいませんが、きっとパワーアップしたような感じに聞こえるのではないかと思います。
Aサスティンの向上
→これも再接着の効果でしょう。修理前は、割と減衰が早く、いわゆる「ボンボン」ベースでしたが、修理後はもう少し立ち上がりの早い、そして、減衰の遅い音になりました!