2012年1月その1「ジョン・レノン"Roof-Top Strap"考(笑)」

2011年11月に、一本のストラップが発売された。
それは、アメリカの”Trophy Strap”社が作った、ジョン・レノンがあの「アップル屋上コンサート」時に使っていた、
ACE社製のいわゆる”ヒッピー・ストラップ”のリイシューである。

アメリカの知人などもその製作に絡んでいたということで、私も一本購入してみたのだった。
届いたのは、右の写真のような製品。

聞けば、実物が無いので、映画”レットイットビー”などの画像から読み取り、
再現をしたのだそうな。
60年代のものと比べると、若干平板すぎる表面は気になるところ。
コンピューターで造られた模様を、これまたコンピューター制御された織り機で織った感じ。
たしかに、色柄はビビッドでいいが、ちょっと(?)マークであった。

そんな私の目に留まったのは、
これまたアメリカの別会社のストラップ。

 これは、確実に表面がでこぼこしている。
 いわゆるヒッピーストラップの定番の刺繍である。

 縁の白線も、トロフィー社が1本なのに対し、
こちらは細い線が2本平行に入っている。

 説明を読むと、「こちらの方が本物と同じパターンで作られている。裏地も、本物と同じ合成皮革で出来ている。
最近売り出された『まがいもの』のストラップにはみんなでNoと言おう。
などと過激な説明である。値段的にはトロフィー社よりほんの少し高い。
 ※トロフィー社は69.95ドル・・・こっちは79.99ドル。10ドル=
約800円差である。
研究のためにこっちも入手してみた。

さて、両者を並べて観察してみると、いくつかの点で差があることに気づく。

まず、表面の処理である。
右の画像の、上が新しい方のストラップ。
下の方がトロフィー社製のストラップである。
刺繍で表現された新ストラップに対して、
トロフィー社の方は平面的で、凹凸のすくない処理をしている。
縁の白いラインの違いもはっきり見えるであろう。

さらに、大きな違いはこの「模様」の大きさと数である。

引きの画像でみてもらおう。
上が後で入手したもの。下がトロフィー・ストラップである。
明らかに模様の大きさが違う。同じ長さで比較すると、
トロフィーの方は金の模様が13個に対して、新しい方は
19個も入っている
また、ギターを吊る部分のレザーの形も、トロフィー社の方は五角形の大きな形になっていて、
オリジナルの形状とは大きく異なるのである。

では、どちらがよりジョンの使っていたものに近いのか。
これは、もう実際の画像から見て取るしかない。

そこで、「Let It Be Box」の写真集からとった画像などを参考に、
模様の数などを調べてみた。

左が体の全面の画像。
例の「金模様」が最低でも6個確認できる。
右の方は背面からのショット。
リンゴのシンバルの陰になって見えない部分もあるが、調節用の金具までの間に最低8個の模様が入っている。
これを、先ほどのストラップの画像と比較してほしい。

・・・トロフィー社のストラップでは、この数は絶対に並ぶことができないのだ。
要するに、
模様が大きすぎ、少なすぎるのである。

ちなみに、身長172センチの私が適切な位置にカジノをつると、この新ストラップだとちょうどジョンと同じ数くらいの模様がそろうのを確認した。

ということで、
鳴り物入りで発売されたトロフィー社製の「ルーフトップ・ストラップ」であったが、
実際には別会社のレプリカに敗北するという結果になってしまったのである。

しかし、トロフィー社のストラップにもよい点はいくつかある。それは
@幅が広いのでベースなど重いギターを吊るのには最適。
A裏地がコットン織りになっているので、滑りにくく、使い心地がよい。
B皮部分とストラップ部分の接合部などの作りが高級でよい。
C模様がくっきりしていてビビッドなので、ステージ映えする。

このようなことである。

最終結論としては、
A:究極のレプリカは、トロフィー社ではなく、新しい方の製品である。
B:トロフィー社の方は柄は間違っているが、ストラップとしての基本性能は勝っている。
と、このような感じでまとめておこうと思ふ。