2011年10月その2「秋の工作:AC30/6N トップブースト回路交換」 編
秋の工作2日目である。
今回は、長年の懸案であった'63年型AC30君の「トップブースト回路」の交換に打って出た。
この回路は、簡単にいわば「後付けのトレブルとベースのトーン・コントロール」だと思えば間違いない。
もともとAC30には音量と「カット・コントロール」(高音域を削るコントロール)しかなく、ある意味音作りは「不可能」であるのだ。
この「旧式な」アンプを、モダンな音楽に適応できるように開発されたのがこの「トップブーストユニット」である。
※正式には「ブリリアンス・ユニット」という。
元々はギブソンアンプのトーン回路をそのままパクった、いわばコピーだが、回路を設計する段階でミスを犯したため、かえって「高音域を上げると低音域も上がる」という謎の動作をする回路になってしまった。最近のAC30では、このミス回路と、本来あるべき独立した回路を切り替えできるようにしているほど、個性的なトーン・コントロールと化しているのだ。
しかも、当初の「音作りの幅を広げる」という目的とは別に、初段に真空管を1本増やすことにより、入力のゲインが増し、
さらに太く大きな音に生まれ変わるという効果も併せ持ってる、まさに「奇跡の回路」なのである(笑)。
これにより、初期型のEF86真空管を使ったAC30と比較されてダメダメだったAC30を再生させ、栄光へと導くことになった。
さて、今回入手したのはイギリス在住スティーブ・G氏の作ったカスタム品である。
氏は他にもエフェクターキットやAC30のレプリカアンプの製造などに携わっているプロの技術者である。
60年代に開発されたブリリアンス・ユニットをできる限り再現し、高品質な部品で組み上げている。
黄色い「マスタード」みたいなキャパシターもなかなかよさそうな感じで、これならば音色などには不安はないであろう。
私のACにもともと付いていたユニットはかなり古いものらしく、抵抗やコンデンサーなどの部品も交換されている。
どうせなら、この際全部新しくした方がいいのではないかと思ったのだ。
まず最初の作業は、今付いているユニットの分離である。
接続部分は全部で6か所。
1・2…ヒーター線
3・・・アース線
4・・・B+線
5・・・真空管から出る出力線
6・・・ボリュームポットからでる入力線
これらをどんどんはんだで分離していく。※数字の色はコードの色と同じ
こんな感じでユニットがシャシーから取れた。
次に新しいユニットを今度は逆に6か所はんだ付けしていく。
@まず、黒いアース線を基盤裏通しでアースポイントに。
これは線が邪魔にならずになかなか良い。
A次に、赤いB+線。
マニュアル通りならば下のタグの右から9番につなぐのだが、
そこにはすでに2本の黄色線があり、はんだ付けしにくいのだ。
そこで、同じ線につながっている上の基盤の右から13番に。
これなら楽勝である。
Bヒーター線を、4番真空管のヒーター線に割り込み。
ここからヒーター電源を取るのである。
まあ、黄色と青は逆につないでもまったく問題ないのだが、気分的にそろえたいものだ。
ここまでできたのが左の画像。
ヒーター線はノイズ対策用にねじりん棒状態にしてある。
以前にオーバーホールした時に交換した新しい抵抗や、
超?貴重なWIMAのキャパシターたちが見えるであろう。
残りの2本は、上のコントロールパネルにあるポットとの結線である。
Cグレーの2本の「出入力線」である。
真空管の足から出た方が左のポット側へ。
シールド線はアースにつなぎ、
芯の線は1Mポットのワイパーに。
このポットが「ブリリアント・チャンネル」のボリュームポットなのである。ここからトップブースト回路に信号を取りだすのだ。
トップブースト回路のポットからは出力線が出て、これは先ほどのポットから外した線に直結。
この線はその先の回路にトップブースト回路を通った音声信号が戻るように働く。
ノイズ対策/ショート対策の為にここの接続部には熱収縮チューブを巻いて保護する。
最後に穴あけである。
トップブーストユニットを固定するために、
コントロールパネルの側に3ミリ程度の穴をあけ、
その穴にビスを通してユニットと共締めするのである。
考えた挙句、家にあるハンドドリルにビットをつけて、慎重に穴あけしてみたが、
素材は想像以上に柔らかく、あっという間にあっけなく穴があいた。
さっそく固定して、設置完了。
シャーシを元の位置に戻し、真空管を全てはめて、テスト。
取り合えずノイズ等の問題はなさそうである。
ギターをつないで(今回はSG君)音を出してみると、回路が元気になったせいか、ブリリアントチャンネルの音量が増し、クリアーになった。
やはり音声信号の通る部分にはケチらずに金をかけよという基本的な理念は正解なのかもしれない(笑)。
とりあえず成功のうちに終わった秋の工作2題であった。
しかし、終わってしまうとなんだかさびしい・・・秋だから?
こうなったら生まれ変わったアンプたちでギターを弾きまくろう!
と決意したoyoyoであった。