2011年2月その4 「リッケンバッカー・トラスロッド交換」 編
ここ数年来、ずっと探していた「幻の」部品。
それが、この「リッケンバッカー・旧タイプトラスロッド」である。
オールド・リッケンを手に入れて以来、数回ロッドを抜いてはネック調整を試みてきたが、
マイルドスティール製のこのトラスロッドは、ねじ山を切ってあるナット部分の強度が落ちやすく、
実際にはいくらトラスロッドを締めても、ナットが下を向くばかりで全く効かない状態、といっても過言ではなかったのだ。これでは、近い将来楽器としての機能を失うことにもなりかねない。
かといって、もはやリッケン本社でも「旧タイプのトラスロッドは販売しておりません」状態だったため、
「もはやこれまで」と半ばあきらめていたのである。
それがとうとう、オークションで落札できたのである。
これを奇跡と呼ばずして何と呼ぶのだろうか!!!(大げさ)
今回手に入れた相手の方はなんと元リッケンバッカー社でビルダーとして働いていたD・F氏。
落札時には気づかなかったのだが、このように長文のインストラクションを書いていただいた紙に、直筆の署名が書かれていてわかったのである。
彼はアメリカでもリッケンバッカー・リペアの部門では「ドクター」と呼ばれる専門医扱いで(笑)、たいへん尊敬を集めている方である。
そんな方から直接ロッドを購入することになろうとは・・・感慨もひとしおであった。
さて、こうなったら是が非でもロッド交換を成功させなければなるまい!
まずは古いロッドをスロットから引き抜く。
ヘッドの塗装面に傷をつけないように、プラスチックの薄板をはさみながら、慎重に引っこ抜いていくのだが・・・最後は「エイヤッ!」と気合を入れて引っこ抜かねばならない。
ロッドが抜けると、このような四角い穴が見えてくる。
ここに、2つ折りになった鉄の棒が突っ込まれているのだ。
その2つ折りの片方にナットをつけ、もう片方をスペーサーで押さえ込むことにより、
上下の鉄棒の長さに差が生まれる・・・これがリッケン独自のトラスロッドを効かせる仕組みなのだ。
上のロッドが古い物。
下のロッドが新しいほうである。
明らかに、古いほうはねじ部分が短い。
この部分の強度が抜けてくると、ここから折れてしまい、ロッドが全く効かない状況に陥るのだ。
新しいほうはまだまだしっかり感がある。
これは効果が期待できる。
ロッドの反対側はこのように2つ折りになっている。
上の古いほうはもう赤錆が出始めている。
これでは、強度を期待するのも厳しいだろう。
新しいほうは、若干のくすみはあるものの、未使用なのでまだまだしゃきっとしている。
さて、この新しいロッドをさきほどのスロット穴に押し込んでいく。
本などを参考にすると、
「引っかかった場合は無理せずに・・・」見たいな事が書いてあるのだが、
割とすんなりはいってしまい、あっけないくらいである。
さて、2本のロッドを仕込み終えたら、
そこに「スペーサー」をかませて、ナットで締めていく 真鍮製のきれいなスペーサーが付属してきたのだが、
残念ながらロッドの入るスロットとの幅が適合せず(新しいほうは狭すぎた)。
仕方が無いので、もともとの「アルミ素材」のスペーサーを再利用する。
ネックを若干の「逆ゾリ」状態に押しながら、すこしずつナットを締めていく。
特に5フレット付近を頂点になるように力をかけながら、
とりあえずナットを締め終えた。
さて、ネックの状態を目視してみる。
低音弦側はうれしいくらいにストレートであるが、
高音弦側はまだすこし順反りが残っている。
2本ロッドがあると、こういうときに調整が難しい。
とりあえず、低音側をほんの少し緩め、
高音側を少しだけまし締めする。
あまり無理をするとロッド自体を壊すこともあるし、
締めすぎると指板がはがれると聞いているので、
ほどほどのところで今回は手を打つことにした。
さて、12フレットで弦高をチェックしてみる。
もともとかなり弦高が高めだったのだが、このように2ミリ台にまで落とすことに成功。
この弦高ならば、まあまあ快適に弾けることだろう。
さて、取り外したついでに、
ネームプレートのはげかかった白い塗装をタッチアップすることにした。
単なる「ネームプレート」であるが、
破損などすると実際入手はたいへん困難であるため、
絶対に割らないような慎重な扱いが必要であろう。
さらに、オリジナルのプレートの特徴は、
「Ricken」の「n」字部分である。
右側の足が「流れて」いるのである。
(通称…流れエヌ)
とりあえず、ぱっと見はきれいになったので良しとしておこう。
さて、肝心のロッドの方は、とりあえず今の状態でチューニングを維持しながら一日放置し、ネックの様子に変化なければ、このトラスロッドカバーをはめて完成ということにしようと思う。