2010年3月 「トップブースト回路のノブ交換(笑)」 

 左の画像を見て欲しい。
 ある有名なバンドの(笑)ステージ後ろからのショットである。
 アンプが数台写っているが、左から順に
@ジョンのAC30
AポールのAC30※スタンドにヘッドだけ乗せて使用中

手前に横向きなのが
BポールのT60(スペア用)
の画像である。
 当時からT60ヘッドは熱でダレやすく、すぐに使用不能に陥ることがあったため、ポールはライブでもより信頼性のあるAC30ヘッドを使用することになったのだ。60Wという名前に反して出力も十分でなく、まだ初期のトランジスタ技術を使用したT60アンプは実用には向かないと判断したのだ。現在、このアンプは使用されているトランジスタの入手が困難となり、
修理不可能になりつつある(合掌)。

 さて、そのポールのAC30をよく見て欲しい。
 後ろ(矢印部分)から2つのノブが覗いているのが見えるであろう。
 これがいわゆる「トップブースト」回路(正式名称=Brilliance-unit)である.
 AC30が当初はEF86真空管使用を前提に設計されていた。これを高信頼管のECC83に設計変更した際、ゲイン不足/高域不足を招き、消費者の不評を買ってしまう。この解決を図り、なおかつフェンダーのアンプ並みに音作りができるようにと、後付けオプションとして作られたのだ。
 ポールのヘッドだけでなく、もちろんジョンとジョージのAC30コンボにもこの回路が取り付けられている。彼らの初期のギターサウンドはこのアンプの存在なしには語れない。
 さて、この回路、上のノブはBASS=低域を強調するコントロール、そして下がTREBLE=高域を強調するコントロールとなっている。もともとはギブソンのアンプの回路を
そのままパクったものだが(笑)、実は設計ミスまでコピーしてしまったことにより、BASSノブを絞ると同時に中高域まで削ってしまうという、不思議なコントロール効果を生むこととなった。最近のVOXアンプにはちゃんとスイッチがあり、「今までどおりの設計ミス版」と「通常のアンプの効果」の二通りを選択できるようになっている(笑)。


 私の1963年型AC30にもこの回路が追加されている。
 たぶん以前の持ち主の誰かが作って付けたのだと思うが、パネルなどは良くできていて本物と遜色がない。しかし、残念ながらノブが黒い「鳥頭」ノブなのである。
 ビートルズが使用していたAC30はすべて白く丸いノブが使われていたのであるが、今手に入るこの手のノブに、似たようなものがないか探し続けていた。あまりに見た目が違うので、なんとか昔風にしてみたかったのである。しかし、探してみると意外と見つからないもので、「これは昔の電気製品か何かのノブで代用するしかないか…」とあきらめていた。

 ところが、同じようなことを考える人がいたもので、あるアメリカ人男性がこのノブを探した挙句、見つからないので
自分で作ってしまった、というのだから驚きである(笑)。
※このあたりが、私のような「素人」と「玄人」違いであろう。
 きっとこういう部品を少量生産するとすごく効率が悪いはずである。型を作ったはいいが、実際に使うのは2個だけ。きっと大赤字を出しているはずだ。こういう方には敬意を表して協力したいと常々考えているので、お金を出してでも購入し、すこしでも赤字の解消に役立てていただくことにした。

 

 注文してから1週間ほどで到着。さっそく付けてみる事にした。
 まずはバック・パネルをはずして黒いノブを取り外し、そこに新しい丸ノブ君をはめるだけ。簡単だ。

 とりつけてみると、見た目の変化はかなりのものである。
 いつもチキンヘッドが邪魔して読めなかった「BASS」「TREBLE」の文字もしっかりと見える。
 ポイントが打っていないので、今実際にどれくらいのボリュームになっているのかが分かりにくい。しかし元々後ろ側にあるので見えるべくもなく、音を聞きながらセッティングするのならこれでも問題はあるまい。

 とにかく、これでまた一歩「オリジナルの状態」に近づいたわが相棒AC30/6N君。
 先日の3月ライブでも大活躍。ビートルズ・バンドのリードギター用のみならず、他のバンドさんのギタリストにも使用していただき、このアンプ特有の「粘っこい音」を聞かせてくれたのがうれしい。今後も大事に使用し、いい音を出し続けてくれるように維持して行きたいと決意したoyoyoであった。